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2011-10-07 00:00
ついにニューヨークにも到来した「アラブの春」
川上 高司
拓殖大学教授
チュニジアから始まった民主化運動は、シリアで政府の強力な弾圧にも負けずに続いている。イエメンでも自由を求める市民の声は強く強権に屈しない。街中の通りでデモをし、当局と闘う彼らの姿は、すで見慣れたものとなったが、その波は、とうとう民主主義の総本山であるアメリカにも押し寄せた。しかも、世界の金融の中心とも言えるニューヨークのウォール・ストリートに上陸したのである。
9月17日に始まった、ウォール・ストリート占拠(Occupy Wall Street)運動は、警察の取り締まりにもかかわらず、いまではロサンゼルスにも広がり、その勢いは衰えるどころか、燃え上がっている。なにしろ、労働組合、映画監督のマイケル・ムーアや女優のスーザン・サランドンなどのセレブから学者、教師などが次々と支持を表明している。しかもこの動きには、世界のハッカー集団「Anonymous」も協力しているというから、全米に広がるのは時間の問題だろう。
彼らの不満の矛先は、一言でいえば「経済格差」である。アメリカの1%の富裕層は、国の1/3の富を独占し、リッチな暮らしをしているのに、99%は家や仕事を失い、生活に苦しんでいる。「このような状況を作り出したのは、アメリカ経済を破壊したウォール・ストリートの連中である」。だから「彼らは法律の裁きを受けなければならない」というもの。求めるものは、雇用、課税の平等など、今のアメリカが直面する経済問題そのものである。
10月2日のニューヨークのデモでは700人以上の逮捕者を出したが、全くひるむことなく、ウォール・ストリートの占拠は続く。来年の大統領選挙のテーマは「経済問題」。しかも、富裕層への増税の是非をめぐっては、増税反対の共和党と賛成の民主党が妥協の余地なく対立している。このウォール・ストリートのデモは、エジプトやチュニジア同様に時の政権を揺さぶるほどの力を持つかもしれない。ワシントンDCは10月6日、シカゴで10月4日、ホノルルでも11月5日にデモが予定されている。そのほかにもデンバーなど主要都市でもデモが予定されている。もはや対岸の火事ではすまされない。
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