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2011-10-06 00:00
メドベージェフの戦略は「第2のプーチン」狙いか?
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアの次期大統領選をめぐる権力闘争は、プーチン首相の立候補が政権与党大会で決まり、「メドベージェフ大統領が敗れた」との見方が強いが、本当にそうなのだろうか。9月24日の党大会から1週間たち、プーチン候補擁立劇の真相が垣間見えてきた。党大会のシナリオは以下の通りだった。まずプーチン氏がメドベージェフ氏を12月下院選・比例代表制名簿の第1位に据えると提案。続いて、メドベージェフ氏が登壇し、与党が下院選に勝てば首相を引き受ける用意があると述べ、大統領候補にはプーチン氏を推薦した。プーチン氏は「大変名誉なこと」と応じてこれを受けた。
つまり、大統領と首相の2人で最高指導者とナンバー2を入れ替わり、次の大統領の任期6年を乗り切ろうという「双頭政権維持計画」である。メドベージェフ氏は以前から再選を匂わせていたので「メドベージェフ氏がプーチン氏に敗れた」というように見えるが、実際はそう単純ではなさそうだ。党大会後、初めてメディアの会見に登場したメドベージェフ氏は、なぜ立候補を自ら辞退したのかと聞かれ、「国家と国民の利益のためだ」と答え、プーチン氏を推薦した理由として(1)ロシアで今最も権威のある政治家、(2)支持率も私より少し高い、の2点を挙げた。さらに、プーチン氏とポストを交換する合意があったことを認め、何度か立候補を示唆したことについては「不測の事態に備えて保険をかけるためだった」などと述べ、「誰も騙してはいない」と弁明した。
つまり、2人は大統領職と首相職を入れ替えることで合意していたが、プーチン首相の身に何かあった場合、メドベージェフ氏が大統領選に立候補しなければならないため、出馬するフリをしていたということだ。いずれにしろ、プーチン氏が以前から述べていたように「話し合い決着」ということらしい。メドベージェフ氏の説明に対し、「支持率の差は2%程度で、大きな差ではない。権威があるかどうかも大きな問題ではない」として、再出馬しない理由にはならないと見る政治評論家が少なくない。むしろ、メドベージェフ氏が大統領職を譲って首相になることで、真の実力者に近づくことができるとの思惑があるとの見方が強まっている。
第一に、メドベージェフ氏はプーチン氏に代わって与党党首の座に就くことになり、大統領への解任権を行使できる立場に立てるからだ。憲法では上院、下院それぞれの3分の2の賛成で大統領を解任できるとされている。第二に、首相は政府を統括する職務なので法案づくりや予算案作成に関与できるうえ、官僚の人事権を握ることができるからだ。これまで介入できなかったシロビキ(軍や情報機関の幹部集団)にも口を出せるようになるとみられる。もちろん、憲法で定められた権限は大統領の方が圧倒的に強いが、メドベージェフ氏が与党党首や首相を務めることによって実権を握る道が開けることは間違いない。プーチン大統領の下で力を蓄え、うまくいけば6年後にはプーチン氏を凌ぐ権力を手に入れられるかもしれない。負けたフリをして、実は影でほくそ笑んでいるのかも。
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