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2011-09-28 00:00
(連載)オバマ政権の外交成果をどのように評価すべきか?(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
リビアに関し、ボルトン氏は「レジーム・チェンジではなく、民間人保護の責任のため、というオバマ氏の大義は、完全に間違っている」と断言する。NATOによるムアマル・カダフィの放逐は充分に迅速ではなく、新体制が親欧米の安定した民主国家となる確信までは得られていない。「背後から主導する」という戦略は物議を醸し、外交政策評議会のマックス・ブート上級フェローは「それによってアメリカの安全が損なわれる」と警告している。ブート氏は9月1日付けの『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙で「しかし、新体制の樹立に失敗して、リビアで無秩序と強権政治が蔓延するようになると、この作戦は戦術的な勝利でありながら、戦略的な成功につながらないことになる」と述べている。現在、カダフィに忠誠を誓う者達はニジェールへ逃れ、カダフィ本人は見つかっていない。彼らがリビア国外からテロ攻撃を仕掛けることもできる。
オバマ政権の中東政策は、さらに再検討が必要で、ボルトン氏は「一貫性がなく、矛盾だらけだ」として、深刻な懸念を述べている。就任以来、オバマ氏がイスラム世界の世論を「憤慨させる」ことを心配し過ぎていることは、プラハとカイロでの演説に見られる通りである。「アラブの春」ではエジプトでのイスラム勢力の台頭、シリアでの独裁体制の継続、レバノンでのヒズボラ勢力の根強さといった問題がある。さらにトルコはケマル・アタチュルクによる親西欧の世俗政治から遠ざかる道を歩み始めている。ボルトン氏は「オバマ氏の最も致命的な誤りは、オサマ・ビン・ラディン襲撃の成功を機にイラクとアフガニスタンでの駐留兵力の削減に乗り出していることである」と指摘する。オバマ氏はこうした脅威を過小に評価しながら、イスラエルによるエルサレム郊外での住居建設を非難している。こうした問題点を考慮したうえで、ボルトン氏は、オバマ氏が中東での真の危険が何かを理解しているのかについて、疑問を呈している。
私は、ボルトン氏が述べるような、そうしたバランス感覚の欠如が、東アジアでさらに問題になりかねないと考えている。リビアと同様にこの地域でも「背後から主導する」戦略は機能しない。中国と北朝鮮が近隣諸国に与える脅威は、カダフィ体制下のリビアよりもはるかに大きなものである。そうした中で、日本、韓国、台湾の軍事力はイギリスとフランスよりはるかに弱い。中国と北朝鮮がどれほど「憤慨」しようとも、アメリカの関与は地域の安全保障に必要欠くべからざるものである。私はオバマ氏がAPECシンガポール首脳会議の際の演説で述べた「アメリカは強い中国を歓迎する」という一節を再考してくれることを強く望んでいる。
国防支出に関し、オバマ氏は債務上限をめぐる議論を利用して、大幅な歳出削減を提案した。しかし、議会の拡大委員会ではそうした提案を支持していない。共和党と国防総省は当然のことながら、そうしたものには反対している。また民主党も、オバマ氏の国防支出削減に同意して「国防に弱い」と見られたがってはいない。両党の主張に隔たりはあるものの、拡大委員会が11月の締め切りに結論を出す際には「国防費を維持してゆこう」という議論が勢いを盛り返すこともあるだろう。9・11テロ攻撃10周年が過ぎ、アメリカは2012年大統領選挙に向けて安全保障の議論を深める必要がある。ボルトン氏の論文はこのように重要な時期に登場し、オバマ政権の外交政策の成果に対する洞察力に富んだ批判をしている。(おわり)
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