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2011-09-27 00:00
(連載)9.11テロ事件を口実に歴史を逆流させたアメリカ(2)
酒井 信彦
日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
この傾向を一層促進したのが、9.11テロ事件後のアメリカの行動である。これによって東アジアの民主化と民族独立という、世界史の最大の課題は吹っ飛んで、テロの撲滅が最大の課題に摩り替わった。そのために、テロ対策を名目として、アメリカと中国が更に一層癒着関係を深めることになった。アメリカは、テロの犯人はイスラム教徒だということで、テロ撲滅の名分を掲げて、アフガニスタン、次いでイラクに攻め込んだ。これによって、ソ連の解体による中央アジア諸国独立が、自国の東トルキスタンに影響することを警戒していた中国は、イスラム教徒であるウイグル人の独立運動の弾圧を、公然と「テロ対策だ」と称することができるようになった。これはイスラム教徒以外のチベット人の運動にも、深刻な影響を及ぼしている。
更に中国と同様の動きは、旧ソ連のロシアでも見られる。ソ連が解体することによって、民族の独立はかなり実現したが、ロシア自体がいまだに広大な領域を有しているから、その内部にも民族独立問題を抱えている。その典型がコーカサス地方の、チェチェン独立問題である。ロシアはこの独立運動を強力に弾圧し、チェチェン人はそれに対して過激なテロで応えてきた。9.11以後、ロシア政府が幾ら過酷に弾圧しても、国際的に非難されることはなくなった。チェチェン独立運動の弾圧だけでなく、現在のロシアは、プーチンの指導の下急速にソ連時代に回帰している。
つまり、9.11テロ事件後の世界は、テロ撲滅に目を奪われ、民主化と民族独立と言う歴史の進歩が忘れられ、正義が踏みにじられる暗黒の世の中になっている。歴史の流れは完全に逆流してしまっている。しかし、そもそも原理的に、テロを撲滅できるわけがない。戦争すら無くすことができないのであるから、極めて小規模な集団で実行するテロを、完璧に撲滅することなど、できるわけがないのである。最近ノルウェーで起こったテロなどは、個人による大規模テロの遂行である。つまりテロ撲滅こそ、虚構の大義である。
アメリカは9.11テロの報復のために、アフガン戦争・イラク戦争というテロ撲滅戦争を敢行しながら、ちっとも成功していない。テロの犠牲者より多くのアメリカなどの軍人が戦死し、その何倍もの現地人の犠牲者を出しながらである。しかもその愚かな戦争によって、アメリカは経済的に甚だしく疲弊してしまった。今やアメリカが、中国やロシアと厳しく対決することなど、全く考えられない。こんなデタラメなことをやっているアメリカに頼りきって、自分で自国を防衛する気力すらない日本人は、既に精神的に滅んでいると言わざるをえない。(おわり)
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