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2011-09-09 00:00
今次のリビアの紛争から自由諸国政府の学ぶべき教訓
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
リビアでの紛争は反カダフィ派が成功を収め、死傷者も少なくて済んだ。この紛争は、コソボ、イラク、アフガニスタンでの紛争と比較しても、小さな犠牲で、早く終わっている。しかし『フィナンシャル・タイムズ』紙のジェームズ・ブリッツ編集員は、8月30日付けの論説で、ヨーロッパとアメリカの政策形成者達が学ぶべき教訓を指摘している。
まずNATOの結束の乱れがこの紛争の早期解決を遅らせ、旧体制がもはや崩壊したにもかかわらず、カダフィ大佐の身柄は依然として発見されていない。イギリスとフランスがNATOの作戦を主導した一方で、スペインとトルコは地上戦への参加を拒否し、ドイツとポーランドは全ての作戦任務への参加を拒否した。アメリカのゲーツ国防長官(当時)は今年6月のブリュッセル会議で、ヨーロッパ同盟諸国による紛争へのより積極的な関与を要求した。きわめて皮肉なことに、アメリカはこの戦争を「背後から主導する」と決定し、英仏主導の多国籍軍を支援はしても、戦闘への直接参加はしなかった。その結果、NATO軍にはカダフィ打倒のための強固で一貫性のあるリーダーシップが存在しなかった。共和党の政治家と保守派の論客達は、そのようにアメリカの役割を自己否定するかのようなオバマ政権の態度を批判している。
問題は、介入の意志だけではない。ヨーロッパ諸国には、カダフィ体制のリビア程度の小さく弱い敵でさえ、これを破るために充分な規模の軍備がない。経済の悪化もあり、ヨーロッパの各国政府は小さく効率的な軍事力という考え方にとらわれている。イギリスは戦略的防衛見直し(SDSR)で空軍が大幅に削減されたので、航空攻撃能力の深刻な不足に直面することになった。NATOによるカダフィ軍への空襲の最中であった4月3日、サー・スティーブン・ダルトン英空軍大将は各国メディアに対して「キャメロン政権の国防計画では国際舞台でのイギリスの軍事的能力を持続できない」と警告した。フランスはどうにかして、この戦争で空母シャルル・ド・ゴールが作戦行動できる状態を維持した。ヨーロッパの軍事力の規模は明らかに不充分なのである。見逃してはならないことに、ブリッツ氏は地上戦の重要性を強調している。空襲だけでは最終的な勝利は保証されないのである。そうした主張を裏付けるかのように、ブリッツ氏は「この紛争で最も高く評価されるべきはカタールとアラブ首長国連邦である。両国は反乱軍に必要な訓練と兵器を提供し、武装蜂起を指導する役割まで担った」というイギリス国防省のある高官の発言を引用している。
リビアでの紛争は、大西洋の両側の政策形成者達に教訓を与えている。ジェームズ・ブリッツ氏が述べるように、NATO内に軍事行動に消極的な加盟国があることで、同盟の結束が損なわれている。しかし、最重要問題は軍備の規模と質である。現在、アメリカもヨーロッパも財政予算をどうするかで手一杯の状態である。しかしゲーツ前米国防長官が「私は長年にわたり、そして今でも、国防予算がどれほど巨額でも、一国の財政の懸念材料となることはないと信じている。小規模な軍隊がどれほど優れていても、行動範囲は狭まり、実行できることも少なくなる」と述べたことを忘れてはならない。グローバル化が進んだ世界では、自由諸国の安全を守るためにも、従来以上に紛争への介入が求められるようになる。アメリカとヨーロッパの指導者達と市民は、今次のリビアの紛争から数多くの重要な教訓を学ばねばならない。
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