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2006-07-02 00:00
日本はアジアと米国の橋渡し役を果たせ
田代裕輔
大学院生
6月22日開催の「日米アジア対話」に出席した者の一人として、私も河野晶子氏の6月28日付け投稿記事「東アジア共同体にとって米国の祝福や支持は不要か」と同様の感想をもちました。シンガポールのサイモン・テイ国際問題研究所会長の「東アジア共同体にとって米国の祝福や支持は必要ではない。東アジアにおける地域主義の誕生と成長は自然かつ中立的な現象であって、米国とは無関係だからだ」という発言は真に驚きでしたが、アジアのひとたちの中にはそういう考え方をしているひともいるんだなあと知ることができただけでも、「日米アジア対話」は有意義でした。
ところで、当日、米国のラルフ・コッサ・パシフィック・フォーラムCSIS理事長が「東アジア共同体は米国の脅威ではなく、米国は心配も、反対もしていない。ただ、米国の懸念は、汎太平洋主義と汎アジア主義の対立が発生することだ。米国がどのような態度をとるかは、開かれた市場経済や、反テロ、大量破壊兵器の拡散防止といったグローバルな価値観を取り入れるかによって決定されるだろう」と述べていたことについて、私が思ったことは、米国人は東アジア共同体をめぐるアジア側の議論を充分に理解してはいないのではないか、ということでした。
つまり、アジア側の米国理解と米国側のアジア理解とがともに不十分であることを感じました。今後東アジア共同体と米国の関係を考察していくにあたり、日本として果たすべき役割はここにあるように思われます。
第一は、汎太平洋主義と汎アジア主義は対立せず、両立可能であることを米国に説明していくことです。田中明彦氏は対話の中で「東アジア共同体と汎太平洋主義の両立は可能だ。アジアと米国の相互関与が重要だ」と述べられました。汎太平洋主義と汎アジア主義の構成国は重なっており、東アジア共同体構想は、米国が直接関与するAPECやARFといったアジア太平洋地域協力等と積極的に相互関与してゆくことが肝要だと思います。
第二は、東アジア諸国に対して、東アジアの平和と繁栄にとって米国のプレゼンスや影響力がどれほど大きなものであるかを折に触れて説明してゆくことです。東アジア諸国のなかには過去において欧米の植民地だった国もあり、ナショナリズムが国民感情として強く残っているため、とかく反米的な言動が先行しがちですが、それでは現実の共同体作りがかえって阻害されることになりかねません。そのあたりを日本が大人の言葉で説明する必要があると思います。
日本はいち早くアジアにおいてアメリカ的な意味で民主化、自由化した国です。その意味で、日本は東アジア共同体内のアジア的な論理をアメリカに対して説明するとともに、またコッサ氏の述べる「グローバルな価値観」を東アジア諸国に対して説明することのできる、数少ない国だといえるでしょう。日本は、東アジア諸国と米国の間に橋を架ける使命があると思います。今回「日米アジア」の「三者対話」が日本で行なわれたことは、先見的意義をもつものといえるでしょう。
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