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2011-08-26 00:00
(連載)水産業特区の是非:漁業権売買を許す妥協策はどうか?(3)
鈴木 亘
学習院大学教授
これを、漁業権の所有権を現在の漁業者個人に一旦与え、その後に、民間企業や他の漁業者に、それを転売したり、貸与したりして良い、という制度する。これであれば、既得権を持つ漁業者が大幅に得をすることができる。零細な漁業者は喜んで転売したり、貸与したりし、速やかに震災の補償金や事業復興資金を手に入れられるほか、参入してきた民間企業に雇い入れてもらうことも可能である。民間企業がいやであれば、他の漁業者に転売することも可能である。
他の漁業者にしても、漁業権を担保に資金融資をうけることができるから、民間企業に負けない近代設備や集約化によって大規模化をする道が開けることになる。そうなれば、もやは立派な事業者・企業家であり、漁業に夢を持つ若者や、やる気と能力のある人々の参入がもっと促進されるに違いない。
また、このような方法であれば、国や宮城県が巨額の公的復興資金を調達する必要がなく、安上がりこの上ない。形は少し変わるが、村井知事の漁業復興という意図は、市場メカニズムによって速やかに達せられることとなる。さらに、売買可能な所有権が帰属するということであれば、他県漁協や全漁連の中にも「得」と判断する漁協も出てくるだろうから、水産業特区への反対が一枚岩ではなくなり、実現性が増す。
もっとも、被災者でもない漁業者に所有権を与えて、所得再分配を行うことは、国民感情からは難しいかもしれない。その場合には、漁業権売買による利益に対して、大幅に課税を行うことも考えられる。被災地の場合には、被害に応じて減税や非課税措置を行うする特例にすればよい。
株式会社や経済団体にとっては、漁業者から漁業権を買わなければならないだけ採算性が落ちることにはなるが、現在のような不透明な仕組みではなく、はっきりと売買できるようになることで、事業の不確実性が減じることは望ましい。また、漁業権を買い取っても、それでも採算が取れる有力な大企業だけが参入することになるだろうから、漁業者が懸念しているような「株式会社による簡単な事業撤退」を防ぐという意味で、この点もむしろ好都合かもしれない。(おわり)
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