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2011-08-25 00:00
(連載)水産業特区の是非:漁業権売買を許す妥協策はどうか?(2)
鈴木 亘
学習院大学教授
このように一見、複雑に絡んだ利害関係の紐を解くことは難しいように思えるが、「漁業権を持つ漁業者にその所有権を与え、売買や貸与が可能な制度」に規制緩和することで、うまく解決できないであろうか。もちろん、各地元漁協や漁業者個人が漁業権の売買ができなくなるような、1県1漁協のような広域カルテル組織は解体させる。価格支配力の無い市町村単位の漁協程度が望ましいだろう。
漁業権は区画漁業権や共同漁業権など様々なものが存在するが、免許期間はほとんどが10年であり、現行制度では漁業権の売買が禁じられている。漁業資源の乱獲を防ぐために、この種の「割り当て」を行うことは、経済学的にも合理的であるが、売買を禁じる経済合理性は全く存在しない。
むしろ、売買・貸与が禁じられることの弊害の方が大きい。漁業権を持っている人々が高齢化して仕事ができなくなったり、今回の震災のように深刻なダメージを受けたとしても、それに代わる新規参入が図れない。漁協への優先権がそれに輪をかけ、事実上、漁業者の世襲によってしか、漁業権が得られない仕組みとなっており、漁業の成長や発展にとって致命的な制度と言える。
また、漁業権を持つ人々にとっても、漁業権を担保に資金を調達することができないために、設備の近代化や大規模化を図ることが、その分、妨げられている。いつまでも個人や零細事業者のままでは、一部の農業のように集約化することも難しい。このため、漁業権を持つことの利益は、漁協やその広域化によってカルテルを結び、価格を吊り上げることの他には、あまり意味がないと思われる。
しかしながら、現在検討されている水産業特区は、漁業権を持つ人々の既得権を無視し、新たに民間企業に漁業権を無料で提供するというアイディアであるから、既得権を持つ人々は何ら得することがない。むしろ価格カルテルを壊されて、損失を被ることになり、これでは妥協が成立するはずがない。(つづく)
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