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2011-08-25 00:00
近ごろ都にはやる落書は「馬鹿の選択」
杉浦 正章
政治評論家
「此頃都ニハヤル物、夜討、強盗・・」と続くのが二条河原落書(らくしょ)だが、近頃「永田町落書」がはやりだした。「馬鹿野仙沢前頼万伸」で「馬鹿の選択前よりまし」と読む。馬淵、鹿野、野田、仙谷、小沢、前原、海江田万里、樽床伸二の名前が皆入っている。民主党代議士の松野頼久が作ったと言われ、その証拠に唐突にも「頼」の文字が入っているのがご愛敬。機知に富むところも、顔も、父親の頼三とそっくりだ。確かに菅直人よりはましだが、政策をどうするかの政権構想を忘れた、“政局馬鹿”たちによる「馬鹿の選択」は、佳境に入った。焦点は前原誠司と小沢一郎の腹の探り合いだ。立候補した前原は8月24日、小沢や鳩山由紀夫と一連の会談をこなしたが、小沢との会談は例によって小沢の“面接”スタイルであったらしい。その証拠には、会談から出てきた前原が怒り心頭に発したような顔つきになっていた。おまけに記者団に八つ当たりして、小沢の感触を聞かれると「小沢さんに聞いてください」と突っぱね、小沢処分解除の話についても「するわけがない」とけんもほろろ。小沢がよほど上から目線のうえに、横柄で、カチンと来なければ出てこない態度だ。
かといって、小沢が前原支持の選択を消したわけではない。エリマキトカゲのように偉そうに見せているが、窮地に陥っているのは、小沢の方でもあるのだ。なぜなら小沢グループ130人と言っても、かき集めの集団で、かっての田中軍団とはほど遠い。グループ内は「鹿野だ」「海江田だ」とばらばら。折からの「前原コール」に乗ってしまいそうな若手議員も多い。130人のうち60人は浮動票とみてよい。小沢が下手な指令を出せば、グループは四分五裂しかねない。とりわけ自分の選挙基盤がぼろぼろの若手議員らは、「選挙の顔」で選択したい指向性が強い。小沢の致命傷は、独自候補を持たないことでもある。自分自身の立候補は、裁判でシロと出たうえでないと無理で、早くても来年9月の代表選までない。そうかと言って落書の「馬鹿野」と「万」では心許ない。おそらく今回の代表選は、ムードが左右するから、前原が過半数をとれなくても、優位に立つ可能性が高い。
前原が1位になれば、決選投票では雪崩を打つ。前原に負けてしまっては“威光”も地に落ちるのだ。だから「勝ち馬に乗る」選択肢もあるのだ。また前原と激突して、前原が勝った場合、政府・与党と野党が結束して、「小沢の袋叩き」を展開する可能性もある。なぜなら10月からの裁判が小沢にとって最大の弱みとなるからだ。ここは敵を作れないところだろう。だから、人事での条件闘争の要素が大きくなってきているのだ。おそらく前回も書いたが、小沢サイドは「小沢幹事長」でバーゲンを吹きかけている可能性が高い。幹事長は資金をフルに使えるから、総選挙で小沢陣営を拡大強化できるのだ。ルーピー鳩山のルーピーたるゆえんは、すぐに本音を吐露してしまうところにある。鳩山は「前原氏は、小沢氏との距離感を保ちながら、自分の思うような人事を行いたいという発想で、小沢氏も含めて挙党態勢を築こうという考えではないように思える」と述べて、焦点が人事になっていることを、はからずも露呈したのだ。
しかし、「小沢幹事長」ではいくら小沢が選挙技術に長けていても、「政治とカネ」が災いして、選挙には勝てまい。また前原も、世論の支持がなくなる露骨な小沢崇拝はできまい。前原が利口なら、「小沢幹事長」は無理でも、党役員・組閣人事である程度の妥協をほのめかして、小沢の顔を立てるのだが、突っぱねれば激突だ。小沢グループがこの調子だから、他のグループに至っては毎日くるくる変わる浮動票だ。もともと「昨日勤皇、明日は佐幕、その日その日の出来心」の浮動票が左右するのが、民主党代表選の特色だ。一方、前原にとっての弱みは、主流派を一本化出来ないことだ。前原と野田の間に立って調整をしている最高顧問・渡部恒三も「2人の意志は固い」として「代表選前の一本化は困難」との見通しを述べた。渡部はかくなる上は代表選に突入したうえで、過半数を前原がとれなければ、決選投票で野田を降ろして、前原に一本化することを視野に入れ始めた。
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