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2011-08-24 00:00
(連載)水産業特区の是非:漁業権売買を許す妥協策はどうか?(1)
鈴木 亘
学習院大学教授
宮城県の村井知事が、東日本大震災で深刻な被害を受けた地元漁業の復興策として、「水産業特区」による民間企業の参入促進を提案しており、震災復興構想会議の第一次提言にも盛り込まれた。これに対して、地元の宮城県漁協ばかりか、周辺県の漁協、全国漁業協同組合連合会(全漁連)までが、こぞって猛反対を続けており、残念ながら、その実現性が危ぶまれる状況にある。この背景には、以下のような複雑な利害関係の構図がある。
「宮城県知事・宮城県」:政局混迷の中で、国の漁業復興対策が速やかに実現するとは思えないし、国も宮城県も財源不足の中、復興に必要な資金をすべて公的資金で賄うことはおよそ不可能である。したがって、株式会社等の民間資金導入によって、速やかに復興を行いたい。それとともに、震災前から、高齢化・零細化・老朽化によって構造的な問題を抱える地元漁業を、民間資本による大規模で近代的な設備導入、若い労働力投入によって活性化し、漁業の明るい未来を築きたい。
「有力な地元漁協」:民間資金は魅力的であるが、1県1漁協化による独占で今まで守ってきた価格カルテルが、民間企業参入によって崩れることは、将来的に損である。国や県による震災復興の公的資金を、政治活動で何とか勝ち取り、今までどおりの漁業が復帰するまで待っていた方が得策である。
「零細な地元漁協」:零細地域まで復興資金が回るのはいつになるか、見当もつかず、とても待ちきれない。もともと高齢者ばかりの状態なのに、今から再度、資金調達をして、漁業を再建し、将来的に大きなリスクを背負うことは難しい。特区によって、民間資金が投入され、若い労働力も呼び込めれば、地元漁業が復帰でき、地域復興も早まるのではないか。
「周辺県漁協、全漁連」:特区制度は一定期間経過後、問題がなければ全国に展開しなければならない、という建てつけの制度となっている。宮城県が水産業特区を導入した場合、大した問題が生じないことは明らかであるから、自然に特区は全国に広げられ、漁協による漁業権独占という既得権益は崩されてしまう。被災地漁協には申し訳ないが、これは何としても防がなければならない。
「経済団体、株式会社」:これまで、漁業権は地元漁協に優先され、漁協の独占の中、新規参入が極めて困難であった。宮城県の動きは千載一遇のチャンスであり、これを機に、まず宮城県の漁業に参入し、将来的には、全国規模の漁業への大規模展開を図りたい。(つづく)
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