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2011-07-25 00:00
民主党政権は解散で「マニフェスト撤回」の信を問え
杉浦 正章
政治評論家
「ごめんなさいで済むなら、警察はいらない」と自民党国対委員長・逢沢一郎が7月24日、NHKで開き直ったが、これは「国会はいらない」と言い直すべきだ。マニフェストが実現不可能になったことについて、幹事長・岡田克也が謝罪したと思ったら、首相・菅直人までが「本質的な方向は間違っていないが、財源問題で見通しが甘い部分があった。不十分な点は国民に申し訳ないとおわびしたい」と謝罪したのだ。4年間で達成の約束が2年で挫折・撤回したことになる。謝れば、2009年の総選挙で出来もしない政策と財源を並べて国民を欺いた罪が許されるのだろうか。許しを請うなら、民主党政権は、例え菅が退陣した後でも、国会を解散して、国民の信を問い直すべきだ。誰が見てもそれが憲政の常道だ。
「よく言うよ」と思うのは、朝日の社説だ。散々民主党政権を持ち上げてきて、首相と幹事長が謝罪した今になって、「とっくの昔に、謝るべきだった。どうしてここまで時間がかかるのか」とのご主張である。どうやらさすがの朝日も民主党政権に見切りを付けたようだ。特集記事の中でも大転換した。「マニフェストを実現できないと宣言したまま任期満了まであと2年政権を担当し続けることは、正当性を欠く。菅首相の辞任後の代表選で徹底的に政策論争をしたうえで、新首相(党代表)は新たなマニフェストを練り上げ、できるだけ早く国民の信を問うのが筋だ」と宣言した。民主党政権が出来て以来初めて、うなずける同社の論調に出会った。編集委員の曽我豪は、朝日にしては是是非非の歯にきぬを着せぬ発言をするが、テレビで「総辞職か、解散しかない」と断定している。たしかに、首相の体たらくに加えて、マニフェストの撤回は、政権そのものの行き詰まりを意味する。解散すべきだ。それにつけても主筆・若宮啓文の論調はユニークさを通り越している。7月25日付け紙面で、菅に「ゲリラ議員に戻って、脱原発で動き回る」ことを勧めている。「脱原発ゲリラの勧め」とは穏やかではない。恐れ入った。
こうしてマスコミの大勢は、早晩早期解散・総選挙論が主流になりつつあるように見える。逢沢も「幸いこの8月から9月にかけて、被災地も一部の例外を除いて地方選挙ができる状況になってきた。これだけの状況に国政がなっている以上、秋以後、国政選挙は必ずできる。それが各政党の国民に対する、一番誠実な態度になると思う」と述べたが、あきらかに菅が狂気の“自爆解散”に飛び込むのを誘っているのだろう。問題はいかにして「菅の手解散」を実現させるかだが、自民党政調会長・石破茂が新たな奇策を提唱し始めた。本会議で先に否決した内閣不信任案を「不信任案無効決議案」を可決した上で、不信任案を再提出して、成立させるというものだ。いちいち面倒な手順を踏まなくても不信任案再提出だけでことは足りると思うが、念には念を入れようというわけか。政権維持の妄念に燃える菅なら、得たりやおうとばかりに総辞職でなく、解散に打って出るというわけだ。菅はとっくに消えた「脱原発解散」の争点が、いまだに利くと見ているフシがあるから、やりかねない。しかし、民主党内は自爆解散で3分の2以上が議席を失いかねないとあって、懸命に止めに動くだろう。民主党政調会長代理の城島光力は、「全力を挙げて阻止する。おそらく全閣僚が解散閣議書に署名しないだろう」と述べている。実力阻止の動きになることは確かだろう。
それでは圧倒的に「菅は辞めない」という永田町の“読み”のなかで、「本当に辞めないか」を分析してみよう。こうなったら菅に直接会った議員の発言から感触を探るしかないが、首相補佐官退任の挨拶で菅に会った馬淵澄夫が「菅さんは強がりで発信しているが、本人の雰囲気は違うと受け止めた」と述べている。国会対策委員長・安住淳も「私の受けた感じでは、一日でも長くやりたいと言う感じではない。退陣は早晩に実現する」との感触を述べている。岡田も野党に「赤字国債発行法案などが成立すれば、必ず退陣する」と明言している。これらの感触から見ると、ようやくさしもの菅も“弱り”はじめてきたかなと思える。しかし、とどめを刺すには、赤字国債法案の成立は不可欠だろう。自民党が自爆解散にこだわり続けると政治空白が続き過ぎる。ここは退陣条件の3法案を成立させてみるという“賭け”も選択肢かも知れない。それでも辞めなければ、当然世論は菅に向けられる。その方が解散に追い込みやすくなるだろう。夫人・伸子の“名言”「支持率にマイナスはない」に、支持率ゼロなら反論できるかもしれない。ゼロなら限りなくマイナスを含むからだ。
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