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2011-07-22 00:00
プーチン首相へのカドリガ賞受賞撤回、メドベージェフ大統領有利に!?
飯島 一孝
ジャーナリスト
民主化に貢献した政治家などに授与するドイツのカドリガ賞選考委員会が、プーチン露首相への受賞を一旦決めながら、抗議を受けて撤回した問題が話題になっている。来春のロシア大統領選を控えた微妙な時期だけに、メドベージェフ大統領とプーチン首相のどちらに有利に働くのか、考えてみた。プーチン首相への受賞理由は「安定した独露関係に貢献した功績」とされるが、この決定を聞いた民主グループから次々に異論が上がった。ドイツの緑の党のエズデミル代表は「プーチン首相は人権を軽視している」として選考委員を辞任。さらにチェコのハベル元大統領は「プーチン氏に賞を与えるなら、自分の過去の賞を返上する」と表明、ついに選考委員会は受賞撤回に追い込まれた。
この騒ぎは7月17日から独ハノーバーで開催される独露フォーラムの直前に起きただけに、出席していた両国首脳らに衝撃が広がった。メドベージェフ大統領は19日の記者会見で、選考委の撤回決定について、「臆病で一貫性のなさの表れ。カドリガ賞の権威を事実上ダメにしてしまった」と決めつけた。一方、メルケル独首相は、この問題に慎重に対処し、コメントはしなかった。だが、グリニン・ロシア駐独大使の「(この決定は)非常に残念だが、両国関係に害を与えるとは思わない」との発言を支持したと伝えられている。
プーチン首相サイドでは、ペスコフ・スポークスマンの「選考委を悩ます混乱を反映したもの」とのコメントを出しているが、内心はカンカンに怒っているに違いない。首相の人権無視のイメージが、この大事な時期に改めて浮上し、受賞をぶち壊したのだから、当然とも言える。大統領選の事実上のライバルとされるメドベージェフ大統領は記者団に「これはドイツの頭痛の種になるが、我々の問題ではない」と言って、会場を後にしたという。プーチン首相のマイナス面が問題にされ、かえって大統領のリベラルな面が浮き彫りにされることになり、大統領にとってはプラスと考えているのではないだろうか。
メドベージェフ大統領は、ソフトな物腰と民主主義擁護の姿勢から欧米諸国に一定の支持を得ている。とくにメルケル首相との関係は親密で、今回の会談でも、ともに次期選挙を頑張ろうとエールを交換したとされる。こうした状況を見ても、今回の受賞撤回騒動は、メドベージェフ大統領の得点につながることは間違いない。
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