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2011-07-08 00:00
(連載)在沖米軍のグアム移転中止に合理性あり(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
現行の移設計画は、司令部機能をグアムに移転し(一部残すという話もあるが)、戦闘部隊を沖縄に残すというものである。この案の長所は、司令部を戦闘地域から遠ざけ、攻撃されにくくするという点である。一方で、司令部と戦闘部隊を分散配置することで、作戦遂行が複雑化する可能性がある。前者のメリットを得るために、102億ドルもの巨額の費用を掛ける価値があるのか、再検討する必要がある。
米国のシンクタンク、ランド研究所は「中国は有事の際には、高性能弾道ミサイルで敵基地を先制攻撃する軍事ドクトリンを新たに採用した」と報告している。そして、台湾有事の際、その対象は、普天間、嘉手納、空自那覇基地であろうと言っている。グアムに司令部を移転しても、沖縄に残る海兵隊の実戦部隊が壊滅してしまっては全く意味がない。それどころか、グアムの司令部も当然先制攻撃の対象となろう。巨額の費用を掛けてグアム移転を実施する意義は著しく低下したと言わざるを得ない。それよりも、中国が新たに採用したとされる、敵基地への先制攻撃のドクトリンに対抗することに費用と力を注ぐべきであろう。我が国に自助努力が求められることは言うまでもない。ミサイル防衛の強化と航空戦力の増強は必須である。
在沖海兵隊のグアム移転は、さらに大きな米軍再編の一部でもあるが、この米軍再編は、駐留に抵抗の少ない地域に米軍を駐留させ、「不安定の弧」を主なターゲットとして、有事の際には軽量な部隊を迅速に投入することにより、距離の不利を補うというラムズフェルド理論に基づいている。これは冷戦型の配置から脱却するという意味だが、現在アジア太平洋地域の安全保障環境は、国家対非国家の「新しい戦争」ではなく、伝統的な国家対国家の構図となっている。これは冷戦型と言ってよいのであろう。その意味でも、米軍再編自体、少なくともアジア太平洋地域においては、修正を迫られていると言えるであろう。
普天間移設とグアム移転はパッケージであり、普天間が動かなければグアム移転もない。「普天間の固定化」は、軍事的合理性の観点からすれば、必ずしも悪い話ではないように思われる。我が国は、防衛に関する自助努力と引き換えに、在沖米軍のグアム移転計画の見直しを呼びかけてしかるべきである。ただ、日米の首脳レベルでの信頼関係があまりにも損なわれており、そのようなことを日本側から到底言い出せないような状況となっているのは、遺憾極まりない。(おわり)
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