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2011-07-05 00:00
(連載)オサマ・ビン・ラディンの文書ファイルが明らかにしたアルカイダの衰退(2)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
イスラム教の統治領をイエメンに早期に設立したいとの野望を持っていた「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」のリーダーに送信したビン・ラディンのメールは、「時期が早い。支持が充分に得られていない」などとして「米国攻撃に専念するよう」再度にわたり説得していたことが判明している。2009年のクリスマスに起きたノースウェスト航空機爆破未遂もAQAPのグループによる犯行であったとされている。CIAおよび他の政府筋は「テロリズムの記録としては最大級の貯蔵物であるビン・ラディンのファイルを解読するにはまだ数年を要するが、今後も新たな局面を知る大きな手がかりになる」と述べている。また、これまでの分析で、莫大な資料から最も明白になった事は、ビン・ラディンには米国に対する一種の執念があり、「米国を攻撃することが最優先のゴール」であったことである。しかし政府側は、アルカイダ・リーダーとのメール交換によるビン・ラディンのテロ作戦に関して、その結論を討議したり、特定のメッセージを新たに公表するかどうかは、明白にしていない。
米国とアルカイダ及びタリバンとの戦争は、これまで対テロ戦争、政治・経済戦争、宗教を含む文化戦争など、様々な観点から論議されてきたが、ビン・ラディンは「宗教戦争」と言明していたことに注目する必要がある。『International Journal of Politics, Culture, and Society』誌によると、2009年クリスマスの民間航空機爆破未遂事件後、イエメンのアルカイダ関連のインターネットで、そのリーダーは「イスラム教徒に対する戦争に参加した西洋諸国はみな十字軍と同じだ。米国の民間人及び軍事上の同盟国の国民を殺すことは、場所を問わず、全てのイスラム教徒の宗教的義務である」と宣言している。
他方、米国のキリスト教史家のマーク・ノォールは、その共同著作『Religion and American Politics』で「ジョージ W. ブッシュは熱心なキリスト教信者であった」と明記している。すなわち「ジョージ W. ブッシュほど、宗教の権利を常に唱え、個人の信仰心を政治に活用したいと願望した政治家は、歴史上存在しない」と述べている。例えば、「聖書を基盤にした政策や法律の制定を望んでいたブッシュは、彼のアドバイザーとして多くの宗教指導者に囲まれており、ブッシュこそキリスト教原理主義者であった」と述べている。また、ブッシュと彼の新保守主義のアドバイザーは、テロリズムに対する戦争の宣言後、民主化運動を強く推進したが、これは「民主主義を広めるためだけではなく、彼の宗教的思想も広めるためであった」と解釈している。事実、前ブッシュ大統領は2001年に「テロリズムに対する戦争」を開始した当時、この戦争は「神の思し召し」であり、戦争に派遣される兵を「十字軍」と呼んだところから、米国ではキリスト教原理主義者が「宗教戦争」であると思っている傾向がある。
結論として、アルカイダには政治および経済的な要素も含めて複合的動機があると思うが、宗教的要素が濃い点も否定できない。ビン・ラディン自身が、米国がイスラム教の王国または聖地を占拠していることに対する反抗声明として、イスラム教の法則に従っていない政府との戦いであること、ユダヤ人と十字軍に対する宣戦であること、イスラエルを支持する米国への反抗であることなどを理由にあげている。また、無人飛行機による攻撃、爆破は、G.W.ブッシュ政権からの対テロ戦争の戦略として現在でも続き、オバマ政権下でも拡大している。米政府は、それが「テロリスト組織を直接標的にした爆撃であり、市民の巻き添えを避けた作戦である」と主張している。しかし、パキスタンでは、過去数年間で500人以上のテロリストの抹消に成功しているが、その背後で、多くの市民が犠牲になっている。アフガニスタン、イラク、イエメン、リビアの他にも最近では、ソマリアでも無人飛行機による攻撃、爆破が行われている。近年、有識者や人権団体からこのような戦略に対する批判が高まっている。アルカイダは既に衰退の様相である事も含めて、対テロ戦争が長引けば長引くほど、根の深い本質的な問題に目を向けない米政府は益々多くの国から批判される結果になるのではないだろうか。(おわり)
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