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2011-07-01 00:00
(連載)ゲーツ国防長官退任の意味するもの:財政規律か国防予算か(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
NATO同盟諸国の軍事能力もアメリカの国防を考えるうえで重要である。ブリュッセルでのNATO国防相会議に参加したゲーツ長官は、ヨーロッパの同盟諸国に防衛での貢献を高めるように要求した。加盟国の中にはスペインやベルギーのように国防費がGDPの約1%という国もある。これは日本と同じ水準で、平和主義の憲法と国民感情がこの国の軍事行動の足枷になっていることはよく知られている。ロバート・ケーガン氏がかの有名な著書“Of Paradise and Power”で「軍神マルスのアメリカ」と「愛の女神ビーナスのヨーロッパ」について述べてからというもの、事態は変わっていない。イギリスとフランス以外のNATO同盟諸国の軍事力は、まさにピグミー並みである。
この他に、アメリカの国防の重要課題と言えば、アフガニスタンが挙げられる。オバマ政権は「オサマ・ビン・ラディン襲撃の成功は、長年にわたる戦争を終わらせる好機だ」と見ている。しかし、軍部の戦略家達はオバマ氏の判断が正しいとは思っていない。外交政策イニシアチブのロバート・ケーガン所長は、マイケル・マレン統合参謀本部議長が「この決定によって反乱分子が勢いづいて、現地に残る部隊に迫る危険が高まっている」と述べたように、殆ど全ての軍部の指導者達は「撤退がもたらす破滅的な結末」を憂慮していると述べている。また、同盟諸国がアフガニスタンでの軍事貢献度を下げるようにもなるという。
また、『デイリー・テレグラフ』紙のトビー・ハーンデン氏はオバマ氏と軍部の深刻な対立を象徴する一件として、6月23日の上院公聴会でデービッド・ペトレイアス陸軍大将が「マレン海軍大将の見解に同意する」と証言したことを挙げている。実際に、ゲーツ氏がアフガニスタンを訪問した際に「性急な撤兵の危険性」を警告している。近隣諸国は米軍撤退に伴う混乱を望んでいない。アメリカ政府高官がタリバンとの対話に臨んだ際に、インドが懸念を表明したのは、デリーでは「『良きタリバン』など存在するとは思われていない」からである。
財政規律が重視されるようになると、コスト・パフォーマンスへの配慮が重要になる。しかし、効率性を求めすぎると、次から次へと新しい脅威が出現する世界では安全保障を損なってしまう。残念なことに、現時点では2012年の大統領選挙に向けた議論では安全保障問題は二次的な扱いである。共和党の候補者達はオバマ氏の経済および社会保障政策への批判では一致しているが、国防問題、特にアフガニスタンをめぐっては、賛否が分かれている。しかし忘れてはならない!世界の安全保障が脆弱では、国内でのネーション・ビルディングなど決してうまくゆかない。また、アメリカが自国の国防を削減しながら、「フリー・ライダー」になっている国々に国防費の増額を求めても、説得力はないのである。(おわり)
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