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2011-06-23 00:00
攻防の本質は、「退陣」ではなく、「解散」の有無へ
杉浦 正章
政治評論家
この政局の本質は、首相・菅直人が「退陣」するかどうかなどではない。「退陣」は当分しないのだ。むしろ、菅が「脱原発解散」を視野に入れて、政局の主導権を握ろうとしている流れを、食い止められるかどうかの攻防であろう。政治記者もようやく分かって来たとみえる。影響力最強のNHKが「再生エネルギー特別措置法案の成立により、菅総理大臣は衆院解散に打って出ようと考えているのではないかとささやかれ始めた」と報じては、追いかけざるを得まい。朝日新聞も含めて政局記事に「解散」の2文字が入るようになった。これを政局用語では「解散風が吹き始めた」と形容する。過去2、3日の動きのポイントは、民主党執行部の「菅降ろし」が成功するかどうかだったが、幹事長・岡田克也以下が腰砕けとなり、失敗した。象徴する部分は「新首相で3次補正」の文言に菅が激怒、結局「新体制で3次補正」と書き改めた所にある。「新体制」では、菅が内閣改造することも容認したことと同じだ。そもそも岡田は自ら辞任も覚悟で菅に迫るはずだった。これでは統一地方選挙も、政局も、“出ると負け”で、幹事長失格だ。すごみがあるのは顔だけかということになる。
岡田に追随していたはずの官房長官・枝野幸男も再生エネ法案について、「首相は野党時代からバイオマス(生物資源)の問題をはじめ、強い関心と意欲を持っている。この法案は、今までの自然エネルギー促進策の代替であり、成立しないとマイナスになる。この国会で成立させてほしい」と、こんどは音より早く首相に追従しはじめた。要するに、この場面は連快(れんぺい)辞任でけりをつけるしかなかったのに、びびったのだ。岡田はことが終わってから逆ギレして、菅に「両院議員総会に出てください」とねじ込んだが、手遅れなのだ。今後は、菅がいかにその地位の保全を図るかだが、菅は厚相時代に薬害エイズで省内や製薬会社を相手に戦ったときと同じ高揚感だという。市民運動家の原点復帰で、孤立感がますます戦意を高めるタイプだから、始末が悪い。その市民運動家・菅が照準を定めたのがまぎれもなく再生エネ法案である。
財界の反対を背景に自民党が反対に回る事を想定して、これを「脱原発」の風潮と結び合わせて、小泉純一郎の郵政解散と同じシングル・イシュウ選挙の手口を使おうという魂胆だ。しかし、この結びつけはトリッキーそのものだ。これに国民がだまされるようでは、ガバナビリティ(被統治能力)が問われる。国民は、2年前の衆院選のマニフェストと同じ、民主党の「詐欺」にあうことになる。なぜなら、「脱原発」と再生エネ法案は似て非なるものがあるのだ。「脱原発」是非のテーマは直近の問題として存在する。絶対反対の市民運動家の主張どおりに全ての原発を止めて再稼働しなければ、日本は確定的に沈没する。明日の飯が食ってゆけるかどうかの問題なのだ。逆に、再生エネ法案は、将来の電力買い取りを想定しており、菅の言う1000万戸にソーラーパネルが付くなど、いつのことか分からない。風車も音がうるさすぎる上に、狭い日本では景観を害する。孫正義は独自の嗅覚で将来カネになると判断して、菅をけしかけているのだろうが、今直ちに実現できるとは思っていまい。
この「時間差」が決定的な違いである。それにもかかわらず、「浜岡停止」で味を占めた菅は、法案と脱原発をあえて同一時間軸に据えて、国民を煽ってイタリア同様に「集団ヒステリー化」させ、選挙に活用しようとしているのだ。もっとも菅自身が停止原発の再稼働を主張しているのであり、本来なら成り立ち得ないテーマでもある。しかし、国民新党代表・亀井静香が「小泉を見習え」と菅に進言しているのは、まさにこのこのトリックの活用にある。国民は、このような淺知恵にはまるだろうか。はまれば解散、はまらなければ退陣だ。加えて、奇策がないわけではない。野党が再生エネ法案に賛成してしまうことだ。自然エネルギー活用に異存がある政党はあるまい。自民党の主張を入れた修正でも良い。たとえば、直ちに電気料金に跳ね返らないように修正するのだ。買い上げ制度が普及、定着したあとでの料金値上げでも十分だ。成立させた後、運用で都合が悪ければ、政権が代わった後にでも修正出来ないわけではない。成立させてしまえば、政局に刺さった解散のとげは一挙に抜ける。菅の居座りの口実もなくなる。今日の読売の社説にあるように「最小不幸社会」でなく「宰相不幸社会」を阻止するには、知恵を出す必要がある。
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