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2011-06-21 00:00
(連載)問題のある朝日の「アジア安全保障会議」報道(1)
酒井 信彦
日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
最近中国の海洋軍事行動が再び盛んとなり、日本の大震災とそれに伴う原発事故の隙を狙うように、日本近海の東シナ海では6月8~9日と連日に渡って確認された。ただし今回の軍事行動の主要な舞台は南シナ海で、とくにベトナムとの紛争が拡大してきている。まず5月26日に、ベトナムの排他的経済水域内で、海洋調査船のケーブルを中国側が切断した。同様の事件は6月9日にも起ころうとしたらしい。これに対してベトナム側が強く反発し、反中デモを6月の5日・12日・19日と、今のところ連続して3回にわたって行っている。ちょうど日曜日ごとに開催しているわけで、これは中国で潰された民主化要求の「ジャスミン・デモ」と同一であり、中国に対する皮肉の意味も、込められているのかも知れない。
またベトナムは6月13日に、アメリカから抑制を求められた、実弾を使った軍事演習を敢行している。同様に中国との間に紛争を抱えるフィリピンは6月13日に、今後は南シナ海を「西フィリピン海」と呼ぶことにすると宣言した。そして6月末から7月にかけて、アメリカとの共同軍事演習を行う予定である。ベトナムにしろ、フィリピンにしろ、昨年秋の尖閣事件で簡単に中国に屈服してしまった日本に比べれば、驚くほどまともである。
ところで、南シナ海の紛争が進行中の6月3、4、5日の3日間、シンガポールで「アジア安全保障会議」なるものが開催された。これは30カ国以上の防衛関係者が、アジアの安全保障問題を議論する場で、10年前から毎年開かれており、主催はイギリスの国際戦略研究所であり、朝日新聞も後援している。シャングリラ・ホテルで行われるので、「シャングリラ・ダイアローグ」とも言う。日本からは北沢防衛大臣、アメリカからはゲーツ国防長官、そして中国からは国防大臣としては初めて梁光烈国防相が参加した。この会議については、6月6日の新聞各紙が報じているが、何と言っても注目されるのは、朝日新聞の報道振りである。
実は、この記事の中で最も大きな見出しで最初に書かれているのは、会議自体のことではなく、中国軍幹部への単独インタビューである。大見出しは「南シナ海『核心的利益』」。中味の記述は、中国軍国防大学教授の欧陽維大佐が5日、シンガポールで朝日新聞の単独取材に応じ、ASEANの一部と領有権を争う南シナ海について「歴史的にみて中国の主権だ」と述べ、「核心的利益にあたる」との考えを示したとの記述で、さらに「中国政府高官が外交交渉の場で、南シナ海が、領土の保全上、台湾やチベットに匹敵する最も重要な『核心的利益にあたる』と述べたと伝えられたことはあるが、公式には認めていない。中国軍幹部が直接メディアに認めたのは、初めて」とある。私には本当かどうか分からないが、要するに朝日のスクープであると言いたいらしい。(つづく)
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