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2011-06-09 00:00
(連載)ギリダラアスの取材した中国の若い世代の理想(2)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
ギリダラアスは、新聞社の編集者、資本家、国際関係の学者など、ある知識階級が語った興味深い内容も紹介している。彼らの共通した意見には、「中国社会は既に行き過ぎた。外国の哲学、ヨーロッパの共産主義思想から米国の資本主義までを包含し、あるいは模倣してきた」とし、上海で著名なある新聞社の編集者は「今日の米国が明日の中国だ」と述べた。「近代化は、西洋社会がその基準を定め、中国は、その基準を受け入れるかどうかの選択を迫られ、人類発展の名目のもとに民主主義と人権、資本市場と英語力を競い、その競争で走り続けてきた。近代化は西洋がもたらしたものだ」と語り、彼らが望む近代化とは「中国人自らが理解し、西洋諸国も理解できる、違う類の近代化のアイディアを中国は持つ必要がある」と理想を伝えた。
もちろん、「大多数の中国人が、このような知識層の近代化の考え方に賛同しているわけではない」とギリダラアスは述べている。その理由は、 若者と彼らの親との世代間の相違があるからだ。中国社会の風潮には「調和と皮肉の二つの対照性がある」と述べている。「調和」は、テレビ局や企業のパンフレットに強調され、また40歳以上の中国人、小さな町村の住民らは、変化している自国にたいして批判せず、少なくとも表面上は「調和」を図ろうとする。親の世代は「自国を偶像化する。なぜなら彼らは中国人である」という意識が強いからであり、「自国、個人、家族の富を築いてくれたのは、彼らの先祖である革命のリーダー達である」と信じているからである。一方、都会で生まれ育った若い世代は、世相を嘲弄し、そのような「調和に反抗する」傾向があり、「政府の在り方に皮肉的」であると述べている。その皮肉った態度は中国社会にある二つの主な勢力となっている「共産党、および個人の生活に重点をおく物質主義」に対して向けられる。特に、インターネットの世界では、中国語で皮肉った会話が多く見られるという。若い世代の「皮肉会話フォーラム」が構築され、「インターネットが紛れもなく武器になっている」と述べている。インターネット技術を駆使した近代化の波は、ビジネスの世界にも大きな影響を与えている。
例えば、レストランで、中国の伝統的食生活をほとんど知らず、西洋の食文化も充分知らない若い世代が作り出すメニューは、インターネットで収集したメニューの新しい材料に、中国伝統の食材を混合して、独自のメニューを生み出すレストランが増えており、中国純粋の伝統的レストランは減少しつつある。ギリダラアスはこれを「ヒュージョン〔融合〕・レストラン」と名づけている。また、ファッション、時計やアクセサリーなどのビジネスにもヒュージョンの風潮がある。1970年代80年代に生まれた世代は、幼少の頃経験した古い文化と、輸入された現在の西洋文化の違いを意識しながら、その両方を融合した生活様式を取り入れている。一方、懐古感を尊重するあまり「ナイキ化現象」から原産地の製品に戻るなど、「潮流に逆らって泳ごうとする」若者も存在する。
結論として、中国は、政治および経済的な側面で西洋文化を導入することに葛藤しながらも、「西洋とは全く異なった中国独自の文明」を生みだそうとしている。新しく変わりつつある社会で「超現代性と古い伝統を組み合わせるプロセス」として、「共産主義、資本主義、国家主義のプライドは、西洋文化とは異なったアイデアと更に劇的な全体構想に向けて融合」しようとしている。多様化した中国社会で、一部の知識人が中国独自の近代化を理想としていることは自然であり、世界の動きを冷観視し、情熱的に未来を語る中国の若い世代に着目する必要がある。しかし、中国の経済成長の一因には「不法の土地販売」や製造された玩具から基準以上の鉛が頻繁に検出されているなど、不条理な貿易慣行に基いた要素があげられる。中国製品が50%以上を占めるアメリカの市場で、欠陥製品の回収が毎年相次いでいる現状は、中国のビジネス原則に問題があることを示唆している。若い世代は、このような現実も鋭く指摘し、世界からの信頼を得ることも中国近代化の理想的な条件の一つとして論議してほしい。(おわり)
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