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2011-06-02 00:00
成果のあった大震災後の日露首脳会談
飯島 一孝
ジャーナリスト
G8首脳会合に出席した日露首脳は5月27日午後、仏ドービルで会談を行い、北方領土問題をめぐり「冷戦後、最悪のレベル」といわれる日露関係をなんとか立て直す一歩を踏み出した。東日本大震災の「雨降って地固まる」の効用か。日本外務省のホームページによると、領土問題のような大きなテーマではそれほど進展がなかったものの、今後の日露関係にとって着実な一歩となるような事業でいくつかの合意がなされたようだ。それをいくつか拾ってみよう。
まず、福島原発事故の対策に関して「ロシアがチェルノブイリ原発事故から得た知見及び経験を活かした専門家間の協議などの協力を進めていくことを確認」した。これまで日本政府が「史上最悪の原発事故」を経験したロシア側の支援申し入れを無視してきたことからすれば、大きな前進である。どうしてもっと早く実現出来なかったかと悔やまれるくらいだ。
2つ目は、メドベージェフ大統領夫人が提案していた、被災地の青少年のロシア招待を日本側が受け入れ、被災地に限らず日本の青少年のロシア訪問を促進していくことで合意した点だ。日本側も大統領夫人の提案を受けるだけでなく、ロシア人の日本訪問を一層促進することを提案しており、両国民の交流拡大につながりそうだ。お互いに意見を交換することで、気持ちが通じ合い、両国民の信頼感が高まっていくことが期待される。
3つ目は、ロシア経済の近代化(または現代化)や極東・シベリア開発などの互恵的な協力を進めていく点で、意見が一致した点だ。メドベージェフ大統領が再選後の最大の目玉事業に挙げているロシアの近代化に日本が協力することを明確にうたったもので、今後エネルギー分野の協力拡大につながる大きな事業となり得る。
ロシアは現在、欧米からアジア・太平洋に軸足を移しつつあり、その大きな転換点になるのが2012年にウラジオストクで開催されるAPEC首脳会議だ。大統領はこの会議に関し、日本側に全面的な協力を求めた。ロシアはアジア経済に不案内であるので、日本側は出来るだけ協力して、ロシア側に「貸し」を作るチャンスだ。日本国民の希望する北方領土返還問題での具体的な進展はなかったものの、今は地味でも協力関係を着実に広げていくことが大事である。とくに日露の青年交流は次の時代を担う人々を育てていく重要な事業である。被災地の青少年ができるだけ多数参加できるよう、関係各方面の協力をお願いしたい。
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