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2011-05-31 00:00
不信任の成否にかかわらず、菅は「死に体」となる
杉浦 正章
政治
首相・菅直人が「鼎(かなえ)の軽重」を問われ、政界は攻防激化でその鼎が沸くがごとき状態となって来た。「女学校の校長」と都知事・石原慎太郎から揶揄(やゆ)された自民党総裁・谷垣禎一が、一転こめかみに癇癪(かんしゃく)筋を浮かび上がらせて、「フシンニン!」と力めば、刑事被告人・小沢一郎は、裁判などどこ吹く風とばかりに「決断するときは決断する」。じわじわ押され気味の幹事長・岡田克也は、ますますフランケンシュタインのそっくりさんになって、目を血走らせ、「除籍だぞぅ~」と若手を脅す。いまや「解散小僧」となった国会対策委員長・安住淳が、人を見れば「解散だぁ」と威嚇。かくして「菅降ろし」は佳境に入って、世の中週内にも提出される内閣不信任案の可決か否決かが焦点となっている。しかし、可決されようと否決されようと、菅は「死に体」となるのが、今回の不信任案提出の特色なのだ。
まず「解散小僧」の解散論は、不信任案が可決されたら10日以内に首相は解散か総辞職を選ばなければならないことが根拠。しかし尻が割れている。解散すれば菅は「完敗」、自民が「圧勝」。「破れかぶれで気が触れた」と言う選択は、いくら菅でもできまい。「小僧」は何も知らない当選1回生を脅しているだけだ。しかし、風だけで当選してきた連中は、遅かれ早かれ“淘汰(とうた)”が運命。大震災早期復興の“大義”のためにも、「菅降ろし」に加わった方がよいのだ。興味深いことに、「被災地のことを思え」という俗論にもかかわらず、その被災地からも解散反対の声が上がった。岩手県知事・達増拓也は「衆院選をやるのは、被災地切り捨て解散をやることだ」と総辞職を要求して、「菅降ろし」のろしを上げた。達増は小沢の子分だからさもありなんというところだが、さすがに小沢はいいところに目を付けて、手を回した。加えてあのまじめ一方の宮城県知事・村井嘉浩も「県議選も延期になっている。総選挙は沿岸部で難しい」と述べており、この発言は信用できるし、重みがある。被災地の知事からの声は説得力がある。
筆者は、先に不信任案同調の小沢系は「50程度」と見たが、30日の自民党・伊吹文明、古賀誠と公明党国対委員長・漆原良夫らの会合でも「50人」と分析したようだ。しかし、小沢の側近で、マスコミだったらとっくに誤報の連続でクビになっている山岡賢次は、「90人を上回った」と、またまた豪語。本当なら社民党を除く野党全員が賛成した場合には、与党から80人前後の賛成があればよいのだから、可決されることになる。政治は弾みだから、まだ数は分からないが、たとえ50人でも、先に分析したように欠席者が出れば可決の可能性が一挙に増える。どうも鳩山由起夫あたりは、グループの欠席戦術を狙っているのではないか。30日の小沢・鳩山会談は、同調できない者をいかに欠席にもってゆくかが焦点であったに違いない。
不信任案が可決されれば、退陣が流れだ。可決されなかった場合はどうなるかだが、「不信任が入り口、問責は出口」という流れとなる。否決されれば、参院での問責決議案が待っている。それも民主党小沢系は衆院で不信任案に賛成した後であり、参院での問責にも賛成する流れだろう。ただでさえ参院はねじれており、問責は確実に可決されるだろう。問責は、不信任案のように法的に菅を退陣させる根拠はないが、一院が時の首相を“否定”した政治的な意味は大きい。菅が退陣するまで参院は動かないだろう。したがって、菅は赤字公債特例法案をはじめ重要法案を成立させるためにも、自らのクビを差し出さざるを得なくなるだろう。問責が可決された場合の過去の例では、2008年に福田康夫は3か月後に辞任。2009年の麻生太郎は2か月後に辞任に追い込まれている。菅は大震災復興のためにも、過去の2人の例より早く退陣すべきだ。それが国への「最後で最良のご奉公」となるのだ。いずれにしても菅は不信任案の上程が固まった段階で「死に体」への階段を一歩一歩上がってゆくことになる。
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