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2011-05-19 00:00
吉田重信氏の反論に反論する
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
5月17日付け本欄における吉田重信氏の私に対する反論は「河村氏の見解を読んでいると、氏は、中東紛争問題の本質をよく理解せず、まるで『パバロフの犬』のように、親イスラエル、反アラブ的な言説を条件反射的に繰り返している、との印象を強く受けます」と述べていますが、問題発言だと思います。私は、先の論評にてペトレイアス陸軍大将がイラク住民の協力を取りつけたことを評価したように、決して反アラブではありません。また、オバマ大統領のノーベル平和賞受賞についても、私はこれまでに『議論百出』、『百花斉放』、『百家争鳴』への投稿で数回言及しておりますが、オバマ大統領を賛美したことは一度もありません。さて、私事はこれまでとし、以下ご指摘の諸点への反論に入らせて頂きます。
まず「イスラエルは中東の諸悪の根源なのか」という疑問を呈したいと思います。確かに長年にわたるパレスチナ紛争は中東の安全保障の最大懸案の一つではあります。しかし、これが諸悪の根源ではありません。アラブ諸国自身の腐敗した権力構造は、イスラエルと関係ありません。また中東諸国同士でも、パレスチナ問題とは無関係に、多数の紛争が起きています。イラン・イラク戦争、クルド人問題、アラブ・ベルベルの対立、スーダン内戦などは、いずれもイスラエルとは無関係です。むしろ、私はイラン革命の方が中東に悪影響を及ぼしていると考えます。イスラム原理主義が台頭したのは、この革命が契機です。また、啓蒙専制君主のシャーがイランを統治していた時代には、サダム・フセインも自らをナセルになぞらえるような誇大妄想は抱きませんでした。また、ソ連軍のアフガニスタン侵攻もイラン革命の余波を警戒してのものでした。ということは、イランで親欧米かつ近代化邁進路線をとる政権が安定していれば、オサマ・ビン・ラディンがアフガニスタンのムジャヘディンに参加することすらなかったわけです。イラン革命がなければ、ビン・ラディンは過激思想に洗脳もされずに、ただのお金持ちのお坊ちゃんとして人生を過ごしていたでしょう。ちなみに、シャーの啓蒙専制政治のモデルが日本の明治維新であることは周知のとおりです。これは宗教保守色の強いアラブの湾岸王政諸国との大きな違いです。
次に「パキスタンの主権侵害」についてですが、オサマ・ビン・ラディンへの襲撃というきわめて機密性の高い作戦を成功させるためには、パキスタンへの事前非通知はやむを得なかったと思います。そもそもパキスタンの軍部と情報機関の中には、タリバンやアル・カイダとつながりが深い人物もいるという強い疑いが持たれています。ロバート・ケーガン氏の著作 “Of Paradise and Power”に基づいて考えると、そうした状況下では「法と手続」を重んずるカントの論理よりも、力の立場を重視するホッブスの論理が適用されるのではないでしょうか。そもそも、私が再三にわたって主張しているように、パキスタンが、核保有国でありながら、軍事基地の町アボタバードでのオサマ・ビン・ラディンの潜伏を発見できなかったことは、大失態です。これが人里離れた北西辺境州やトライバル・エリアなら、まだ許容できました。今回の一件では「一体、この国は核兵器の軍備管理をまともにできるのか?」という強い疑念を抱かざるを得ません。これほどの脅威を考えると、もはやパキスタンの「主権の尊重」などと、悠長なことを言っていられるでしょうか?現在、パキスタン訪問中のケリー米上院議員も、さすがにここまでは言えないようです。この件について、米英がパキスタンの軍部や情報機関とのしがらみで本音を言いにくいなら、唯一の被爆国である日本こそ「核とテロのつながり」で深刻な懸念を伝えるべきでしょう。これは3・11地震以後の「日本外交の空白」を脱する好機でもあります。
最後に、「ビン・ラディンの殺害は、アメリカによる口封じのためであった」という主張には、証拠が挙がっていません。これが仮にたとえ事実だとしても、現時点で何の裏づけもないままに、こうした「都市伝説」を政策掲示板で扇動的に主張することが妥当とは到底思えません。
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