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2011-05-09 00:00
(連載)米英識者が語るビン・ラディン後の世界(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
イギリスの専門家達も、アメリカの専門家達とほぼ同様な見解を示している。チャタム・ハウスのポール・コーニッシュ国際安全保障部長は「最も悪名高い殺戮者の死が持つ象徴的な意味は過小評価できないうえに、チュニジア、エジプト、リビアでのジハード主義者の脅威も低下した」と述べている。もちろん、ジハード主義者の脅威が一掃されたわけではない。チャタム・ハウスのゼニア・ドーマンディ上級研究員はアメリカ議会に対して「財政規律を理由にこの戦争に注ぎ込む人員資材を削減しないように」と警告している。
現在の最も差し迫った課題は、パキスタンである。ビン・ラディンがアボタバードで発見されたために、アメリカの政策形成者の間ではパキスタンへの不信感が高まっている。潜伏先が軍事基地の近くであったことから、アメリカは「パキスタンの情報機関がビン・ラディンをかくまっていたのではないか」と疑っている。この件では、アメリカとパキスタン両国の政府当局者達が困惑している。イギリスの指導者達も今回の知らせに衝撃を受けている。ペルベズ・ムシャラフ氏の退陣以来、アシフ・アル・ザルダリ大統領の下で対テロ作戦での英パ関係は深まっていた。両国関係を後退させないために、パキスタンのワジド・シャムスル・ハサン駐英高等弁務官は「アメリカのSEALs部隊が攻撃を行なうまで、パキスタン政府はビン・ラディンについての情報を持っていなかった」と釈明した。
重要な問題はビン・ラディンがパキスタンに持っていた秘密のネットワークである。オバマ大統領の対テロ作戦顧問を務めるジョン・ブレナン氏は「パキスタンには、ビン・ラディンを支援する何らかの組織があったのではないか」と問いかけている。対テロ作戦でのパキスタンの立場は微妙で、複雑である。パキスタンの情報機関周辺は「ビン・ラディンの脅威を利用すれば、アメリカに軍事援助を要求できるが、アフガニスタンでインドとの関係が深い安定した民主国家ができあがれば、パキスタン自体が包囲されてしまう」と懸念している。欧米での批判と疑念に応えるために、パキスタンのフサイン・ハッカーニ駐米大使はCNNに出演して「オサマ・ビン・ラディンを支援する勢力がパキスタンにある」ことを認めた。しかし、ハッカーニ大使は、パキスタン政府が自国領土内にオサマ・ビン・ラーディンをかくまったことは否定した。さらに、「パキスタンが対テロ戦争ではハリド・シーク・モハメドやラムジ・ビン・アルシーブといったテロ指導者を逮捕するという貢献をしている」ことも強調した。
オサマ・ビン・ラディン攻撃の成功は、象徴的で、大きな成果である。しかし解決を要する重要課題を二つ挙げておきたい。第一に、パキスタンの核兵器との関係を考慮すれば、テロリストを支援する勢力は国際安全保障に対する最重要脅威の一つである。かつてパキスタンは、イラン、北朝鮮、リビアとも結びついた悪名高きカーン・ネットワークで批判にさらされていた。第二に、国家による過激派支援も調査されねばならない。「百家斉放」への5月1日~2日の連載記事で述べたように、イランはアル・カイダとつながっている。また、ヘズボラのようなシーア派過激組織を支援して、レバノンやバーレーンで親欧米政権を転覆し、イスラエルを抹殺しようとしている。こうした問題は、オサマに弔意を示す報復攻撃よりも恐るべきものである。(おわり)
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