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2011-04-24 00:00
(連載)メキシコ湾原油流出事件は再発の可能性がある(2)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
数社の最大手石油会社がAPに語った情報によると、政府へ安全基準の更新を提出しても認可されるまでに2年かかるが、書類上で原油漏れに対処できることを証明すれば、石油会社は申請だけで原油掘削を開始できるらしい。もちろん、規制する側は、石油会社に「十分な補足資料の提出を要求できる」となっているが、事故の2ヵ月後に、オバマ政権で新たに設置された「海洋エネルギー管理規定および施行局」の局長に就任したマイケル・ブロムウィッチ氏は、「石油会社が使用する構成部品のシステムに関して、沖合い油田の噴出状況を想定した試験はなされていない」と、APに語っている。これに対し、ヒューストンのある石油会社は、「管理した環境下で陸上のテストは行ったが、沖合いでの試験は要求されていない」としている。石油会社は「湿地や海辺に浮かせるブームなど、今でも同じ設備や技術に依存している」ことも明らかにした。
以上のように、現状は明らかにオバマ氏の公約や声明に相反している。このことを更に裏付けたメディアは、『MSNBC』ニュースである。3月30日、"Disaster on the Horizon" の著者で、30年来のベテランでもある石油・ガス会社の社長、ボブ・キャブナー氏は、『MSNBC』のニュース・キャスター、レイチョー・マドーとの対談で、意外な事実を明らかにした。キャブナー氏によると、オバマ政権は先月、沖合いでの原油掘削作業を許可し、先月末にはシェル石油会社にルイジアナ沿岸での掘削を許可した。シェル社は、油田での掘削作業に、メキシコ湾 のBP原油流出事故で有名になったトランスオーシャンを雇用している。しかも「トランスオーシャンの掘削船は、ディープウォーター・ホリゾンの爆発で、米国歴史上最悪の原油流出事故の原因となった同じブローアウト・プリベンター(特殊大型バルブ)を使っている」という。
「この掘削船は、ディープウォーター・ホリゾンのケースで使用されたものと同じ時期に製造されたもので、ブローアウト・プリベンターも同じ2000年頃製造されたものです。ひとつだけ違う点は、ブローアウト・プリベンターの部品であるせん断ラムを余剰分としてひとつ増やしただけです。コントロール・システムも、他の装備もすべてほとんど全く同じです」とキャブナー氏は語った。「ブローアウト・プリベンターは完全な再設計が必要ですが、彼らができることは、現存する装置に余剰部品を追加することだけです。部品が一つしかなければ、破損した場合、完全な機能不全になるからです」と話した。この対談で明白になったことは、「連邦政府の安全性基準の焦点は、もし原油漏れが再度発生した場合、その漏れた原油を石油会社が迅速に包囲することができるかどうかであり、最初から流出事故を防ぐことが強調されているわけではない」という点である。これが、チャールス・ペロウ氏やボブ・キャブナー氏など、他の有識者が懸念を示している最大の理由である。
CNNが沖合いでの原油掘削に関して世論調査を行ったところ、「強力に支持する」と答えた率は、事故1ヶ月後の昨年5月21から23日までに行った調査で27%に留まった。しかし、今年4月9日および10日に実施された調査では45%で、かなり支持率が回復していることが明らかになった。もちろん、ガソリンの高騰にも原因があると思われるが、米国は、基本的に多くの局面で失敗の歴史を繰り返し、教訓から学ぼうとしない、呆れた国であるという印象を受ける。なぜなら、シェルも原油産地国ナイジェリアのニジェール・デルタで壊滅的な原油流出問題を起こし、長年地域住民の生活と環境を著しく破壊しているからである。米国内に限らず、地球規模で環境破壊の責任が最も問われているのは、BPやシェル社のような多国籍石油企業である。人命と環境保護の意識が薄く、安全性より利益追求が優先されているかぎり、クリーン・エネルギー政策で米国が他の先進国より遅れているのは当然である。(おわり)
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