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2011-04-22 00:00
英仏のリビア介入へのアフリカ連合の懸念
川上 高司
拓殖大学教授
南アフリカ共和国のズマ大統領を筆頭にアフリカ連合(AU)がリビア紛争の調停に乗り出した。カダフィは素直にアフリカ連合の停戦を受け入れたので、停戦の期待が高まったが、反政府側がこれを拒否したため、和平は望むべくもなくなった。この動きとは別に、トルコが独自で調停に奔走しているが、反政府側が条件として「カダフィの退陣」を掲げているため、妥協の余地はなく、道のりは険しい。
アフリカ連合が調停に乗り出した根底には、アフリカ諸国の「心配」がある。アフリカ諸国にとって、「英仏主導のリビアへのNATOの介入は、歴史の繰り返しになるのではないか」という不安が拭いきれない。かつてアフリカは、英仏を中心とした帝国主義諸国の植民地として辛酸をなめた。その歴史から立ち直る途上で、いまだ紛争や貧困に苦しんでいる諸国が多い。NATOが介入し、リビアで親欧政権が樹立することは、「まさに新たなる植民地化の始まりになるのではないか」と、アフリカ諸国は心配でならない。
国連のリビア介入への決議の投票前、BRICsと南アフリカ共和国とドイツは密かに会合した。その目的は、「英仏のリビア介入は序の口である。いずれアフリカのここかしこに親英仏政権を立てるのではないか」との懸念から、英仏の「野望」を確認することにあったという。これらの国は、決議では棄権している。意外なことにカダフィは、アフリカ諸国の指導者の中ではさほど嫌われていない。そもそもカダフィを極悪非道の独裁者と評しているのは、おもに欧米諸国である。アフリカ諸国にとってカダフィは、欧米のいいなりにならない、アフリカの独立を守る「愛国心」あふれる指導者なのである。しかも、石油産出国として潤沢な資金を持ち、アフリカ連合への重要な資金出資国でもある。仮に英仏主導の反政府勢力が政権を執ったとしたら、同額の出資の保障はどこにもない。
アフリカ連合が英仏の介入を避けるべく早期解決を急いだのもうなずけるが、NATOの支援を受けた反政府勢力は強気であるため、収束の道筋は見えなていない。内戦の片方への肩入れは、悲劇を長引かせることは、過去の経験が雄弁に物語っている。「人道支援」という錦の御旗はあまりにも美しく、曖昧で、危険である。もっと時間をかけるべきであろう。
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