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2011-03-15 00:00
(連載)何故米国では気候変動対策が進まないのか?(6)
西村 六善
元地球環境問題担当大使
コーク兄弟は、2010年11月の中間選挙で躍進した「茶会(Tea Party)」を全面的に支援したので、一躍有名になった。この選挙において、コーク兄弟は反オバマ、反温暖化の科学を標榜して世論を動かすことに成功し、同時にこの選挙で茶会の形でリバタリアン運動の実行部隊を獲得したと云える。大富豪が政治献金することは従来もあったであろうが、リバタリアニズムを標榜してこれほどの大規模なロビー資金が強引に使われていると云う現象は、米国でも新しいことである。「公共の完全性に関するセンター」のチャールズ・ルイスは「自分はウオーターゲート以来ワシントンを観察しているが、カネの額においても、強引なやり口においても、これ程酷いケースはかつて無かった。彼らは現代のスタンダード・オイル社だ」と述べている。
米国経済界には、もう一つの重要な温暖化科学懐疑論ないし否定論の牙城がある。それは全米商工会議所である。元来、米国の経済界は温暖化否定論で纏まっている訳ではない。寧ろ世界的に有力な企業には温暖化を深刻な問題と捉え、「直ちに行動しなければならない」という立場をとっている企業も多い。2007年1月に結成された「米国気候行動パートナーシップ」(USCAP)等はその例である。この団体は全米22の有力企業と5の研究機関が集まり、「気候変動防止のため義務的な削減行動を取らねばならない」という基本姿勢で結束しているものである。全米商工会議所は、このような動きとは反対に、気候変動防止に行動することに否定的な姿勢を取っている。同会議所は300万の米国企業が参加しているとされている。
2009年4月環境保護庁が温室効果ガスが公衆の衛生と福祉に脅威を及ぼすと云う認定をする時に、同会議所はこれに反対した。「温室効果ガスの増大が国民の健康に悪影響を及ぼしている証拠はない」として、温暖化の科学的根拠を裁判にかけることを提案した。しかし、この提案に反対する米国の有力企業が会議所から脱退する動きが始まったため、その後同会議所は、若干姿勢を変え、「炭素排出の削減と温暖化対策を支持する」としているが、環境保護庁の規制や立法には反対の立場をとっている。2010年11月の中間選挙で共和党や茶会が優勢になったことを受けて、同会議所はオバマ政権の環境規制に反対し、対抗する立場を強める傾向にある。
研究所の形をとって温暖化の科学を否定する活動をしている団体としては、シカゴを本拠地とするハートランド研究所(ジョー・バースト理事長)がある。この団体は、元来がリバタリアニズムに基づき、市場経済アプローチ、市場主義に基づく環境保護、教育選択の自由、公的サービスの民営化、規制緩和、私有財産権の優位等を主張する団体である。この団体は、気候変動に関しては、強い科学否定の立場をとり、この立場から毎年学者や専門家を糾合する形で、“International Conference on Climate Change”と称する国際会議を開催している。第4回会議は2010年5月シカゴで開催された。(つづく)
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