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2011-03-14 00:00
(連載)何故米国では気候変動対策が進まないのか?(5)
西村 六善
元地球環境問題担当大使
メディアだけでなく、寧ろ米国の巨大財閥と経済界が政府の機能と予算の徹底した縮小を要求している。リバタリアンの思想を巨大財閥が鼓吹していると云う図式である。その一環として、環境規制反対論が唱えられ、気候変動の科学が否定され、CO2排出削減不要論が唱えられている。米国産業界の膨大なロビー資金が動いている。それがサックス教授の云う世界最大の宣伝マシーンを動かしている。最も典型的なケースはエクソン・モービル社である。同社はフォーチュン誌によれば売上高で世界2位、純利益で世界1位の企業であるが、この会社は2001年3月「米国は京都議定書から離脱する」とブッシュ大統領が宣言したとき、最も強い影響力を発揮したとされている。同社は過去10年余りにわたり、一貫して、組織的に、地球温暖化に関するいかなる国際的な取組みにも反対し、国内的にも温暖化の科学を否定してきた。
その反対姿勢と膨大な資金提供が余りに徹底的であったので、同社に対する世界的な評価が悪化した。この結果、2008年には創業者であり大株主であるロックフェラー一族が、重役会議で温暖化否認を改めるよう求める動議を出すに至った。2008年5月27日付けの『ニューヨーク・タイムス』紙の記事は、その間の事情を詳しく報じている。この動議は結局否決されたが、その後、同社は「温暖化科学否定論に資金援助はしない」と云う決定をしたと報道された。しかし、2009年7月1日付けの英『ガーディアン紙は、同社が依然として米国の研究所等に資金提供をしていると報じている。また、米国では同社が誰にどれだけ献金したかを図と写真で示すサイトが存在している。世界最大のエネルギー企業が温暖化科学を否定しているのかどうかに、米国社会が依然大きな関心を持っていることを示している。
最近、エクソン・モービル社より遥かに大きなロビー資金を駆使して温暖化科学否定論を推進しているとされる人物がいる。それは、カンザス州ウイチタ市に所在する非上場の巨大エネルギー企業コーク・インダストリーを経営するコーク兄弟である。同兄弟は、ビル・ゲイツ、ワーレン・ビュフェットに次ぐ全米第三の富豪である。この兄弟は、リバタリアンの思想に基づき莫大な資金を使って、オバマ政権の政策全てを攻撃し、否定し、2012年の大統領選挙では同政権を打倒する懸命な 努力をしている。その詳細は、2010年8月30日付けの『ニューヨーカー』誌の記事等が詳しく報じている。今日、2人の兄弟は「温暖化の科学を否定しながら、地球環境を汚染し、金儲けをしている大富豪」と云うレッテルを貼られている。その結果、科学懐疑論の米国での最大の主導者とされている。
上記『ニューヨーカー』誌の記事によれば、コーク兄弟は、実際上は一見無害に見える名称の団体を多数作り、そこに大量のカネを注ぎ込み、オバマ反対運動と温暖化科学否定論を起こさせている。「繁栄のためのアメリカ(AFP)」と言う団体がその代表である。この他、ジョージ・メイソン大学のメルカトゥス・センター、コーク兄弟が創立したケイトー研究所、ヘリテージ財団などがその主張の代弁者となっている。なお、グリーンピースはコーク兄弟のロビー活動を調査したとして、その結果を公表している(http://www.greenpeace.org/usa/Global/usa/report/2010/3/koch-industries-secretly-fund.pdf)。 (つづく)
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