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2011-03-11 00:00
(連載)何故米国では気候変動対策が進まないのか?(2)
西村 六善
元地球環境問題担当大使
共和党は主として、(1)温暖化の科学、(2)環境保護庁(EPA)、(3)国連での国際交渉への攻撃を強力に進めている。温暖化の科学を否定する為に、科学者を公聴会に呼んで糾弾する構えだ。また温暖化の科学を証明する政府支出を中止しようとしている。例えば、温暖化は人為だと結論付けている国連機関IPCC(気候変動に関する政府間パネル)に対する米国の資金拠出を中止する動議を出している。温暖化防止への国際交渉自体にも攻撃を仕掛けていて、国務省の首席大使(現在はトッド・スターン氏)のポストを廃止しようとしている。また温暖化防止に関する途上国への資金供与も中止を要求している。環境保護庁(EPA)に対しては予算を大幅に削減し、その機能自体を停止させようとする法案を続々と提出している。
米国は国際的にはCOP交渉で対2005年比で17%の削減を誓約しているが、それを実現する為にオバマ政権が準備したC&T法案は2010年議会で成立しなかった。この為、同政権は、最高裁判所の判決によって確認されている大気浄化法に基づく環境保護庁の権限を行使して、国際誓約を実行しようとしているが、共和党は、このEPAの権限にも挑戦し、実行させないように立法しようとしている状況である。一方、共和党は、国内原油掘削を推進するため、規制を撤廃し、深海原油掘削再開への道を開こうとしている。オバマ大統領の再生可能エネルギー等のクリーン・エネルギー推進投資政策にも強く反対している。
2011年2月3日ニュー・デリーで行われた気候変動と持続的開発に関する大規模な会議(DSDS 2011)で、ジェフリー・サックス教授は筆者を含む400人近い聴衆を前にして叫んだ。「米国は過去19年間に気候変動で実質的なことは何一つしてこなかった。昨年上院はCO2排出規制立法を拒否した。この背後には、原油・石炭資金に由来する big money が動いている。世界最大の宣伝マシーンが動員されて、反科学キャンペーンが横行し、国民を攪乱している。ルパート・マードックがその張本人だ。フォックスTVや『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙、英国のタブロイド紙等が、彼の膨大な資金のもとで気候変動の科学に攻撃をかけている」と。ジェフリー・サックス教授が公衆の面前で米国有数の高級紙とされる『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙を糾弾したこと自体が、深刻な問題提起だ。この新聞の所有者はルパート・マードックであり、この新聞は今や気候変動否定論ないし懐疑論の牙城と化している。ではルパート・マードックとは一体誰か?何故この人物が問題なのか?公開情報で纏めると以下のようになる。同教授が多分知っていることの一部に過ぎないが。
周知の通り、ルパート・マードックは、1931年豪州生まれの米国人でニュース・コーポレーション(通称 News Corp)と云うウォルト・ディズニー、タイム・ワーナーに次ぐ世界第三の巨大メディア会社の社長である。同人は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(USA Todayを抑え、現在米国最大の発行部数を誇る)、『ニューヨーク・ポスト』、『タイム』、『サンデー・タイム』、『サン』等、世界の175の新聞を所有している。有名出版社ダウ・ジョーンズやハーパーコリンズも所有している。テレビでの影響力は、更に大きなものがある。米国では、フォックスTVや Twentieth Century Fox Studio等35のテレビ局の所有者である。これは、米国のテレビ局の40%以上になる。この他19局のスポーツ・チャンネルを所有している。結局米国の5世帯の内1世帯は、常時 News Corp の供給する情報を見ているとされている。フォックスTVは、イラク戦争での積極報道で「陰の勝者」とされた。フォックスTVは、視聴率でCNNを抜いているとされる。フォックスTVの視聴者は、若い世代の保守派が多い。なお最近、英国のスカイTVの買収にも成功した。(つづく)
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