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2011-03-09 00:00
クリントン国務長官は、メア日本部長を即刻解任せよ
杉浦 正章
政治評論家
これほどスチューピッドな外交官は、戦後の日米外交史でも珍しい。国務長官・クリントンは日本部長・ケビン・メアを即刻解任するしかあるまい。なぜなら、こともあろうに担当国の国民を本音で侮辱しているからだ。今後普天間移設交渉など重要課題を考慮すれば、この日米関係に刺さったとげは、化膿する前に抜かねばならない。中国、ロシア、北朝鮮などが固唾を呑んで見守っており、極東の安全保障にも影響する要素をはらんでいるからだ。日本政府の対応は、在日米大使を呼びつけないなど生ぬるい。ハンドリングによっては政権に跳ね返ることを肝に銘ずるべきだ。昨年12月3日に国務省で行った学生に対する講義は、オフレコを前提としただけに真実味がある。朝日新聞によると、出席した14人中5人がメモをとり、つき合わせた上での公表である。その動機も、学生たちが沖縄を訪問してメアの指摘と違う現実を確認したからだという。さすがに米国の学生は自立している。
国務省の日本部長というポジションは、日米関係のかなめ的存在であり、筆者も特派員時代は頻繁に会いに行ったものだ。米国人は外交官でもざっくばらんで、オフレコを前提にすればよく本音を語る。しかし、一般人を前にオフレコでも、これだけの発言をする外交官はいまい。性格の異常性を感ずる。沖縄総領事時代もその発言が物議を醸していた。こうしたケースでは、よくGHQ最高司令官・マッカーサーの「日本人は12歳」発言が例に挙げられるが、マ元帥の言わんとするところは「アメリカがもう40代なのに対して、日本は12歳の少年。日本ならば理想を実現する余地はまだある」という点にあった。「12歳」が、精神年齢ととらえられて、独り歩きしたのだ。
メア発言は違う。確信犯的だ。「和の文化を日本人はゆすりの手段に使う」「沖縄はごまかしとゆすりの名人」「怠惰でゴーヤーも裁培できない」などの一連の発言は、沖縄県民どころか、日本国民全般に向けられたものでもあろう。本来ならば、「ルーピー鳩山」の「抑止力方便発言」並みで、ばかばかしくていきり立つ気にもなれないが、問題はそれほど軽くはない。米政府の本音部分が露呈してしまっているからだ。たとえば「日本政府が現在支払っている高いホスト・ネーション・サポート(接受国支援)は、米国にとって有益だ。私たち米国は、日本に関して非常によい取引を得ている」という発言だ。国務省の数字によると、日本の直接支援の額は、32億2843万ドル。これは同盟国全体の41億4335万ドルの79.9%にあたる。これは、苦しい財政事情の中で“思いやり予算”をひねり出している日本政府をも愚弄する発言であると同時に、米国にとっていかに「笑いが止まらない」支援であるかを物語る。思いやり予算では「どちらが、ゆすりの名人か」お伺いしたいものだ。
発言は民主党政権にも及ぶ。「民主党政権は沖縄を理解していない。まだ自民党の方が、最近の民主党よりも沖縄に通じていて、沖縄の懸念について理解していた」というあたりは、もっともでもある。「(民主党の)3分の1の人たちが、軍隊がなければより平和になると信じている。そのような人たちと話をするのは不可能」という下りも、国務省の本音が出ている。いずれにしても、これだけの発言に対して、日本政府の対応は生ぬるい。外相臨時代理の枝野幸男がルースとなんと電話で会談して抗議したが、この場合大使を呼んで抗議し、日本部長の辞任を求めるのが、妥当だ。政府は度重なる対米失政の「羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」べきでない。ここぞという場合に及び腰では、国際的になめられる。この発言は、沖縄県民の感情を逆なでして、県議会は発言と謝罪を求める決議を可決した。ただでさえ暗礁に乗り上げている普天間移設問題は、鳩山発言に加えて、メア発言で、にっちもさっちもいかなくなってきた。国務次官補・キャンベルが“個人的”に謝罪の意を表するくらいでは、収まらない。とりあえずメアの解任は、日米関係の将来を考えるなら、早ければ早いほどよい。
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