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2011-03-03 00:00
(連載)アラブ諸国に共通する貧富の格差と政治の腐敗(1)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
中東の反政府デモは、昨年12月17日にチュニジアで始まり、エジプト、イエメンに飛び火し、その後ヨルダン、サウジアラビア、バーレーン、イラク、イラン、リビアなどほぼアラブ諸国全域に広がっている。一般的な原因としては、貧困、失業率の高さ、食品物価の高騰、政府の腐敗などがあげられる。以下、『CIA-The World Fact Book』および『Encyclopedia of Nations』を参考に、上記した主な国の状況を主として経済的観点から分析し、民主化の波が急速に押し寄せている長期的および短期的原因を探ってみたい。また、後半では、ウキリークスが公表した中東の腐敗政治に関する秘密外電文書も一部紹介したい。
昨年12月に今回の反政府抗議運動の先駆を切り、今年1月14日には大統領ベン・アリを辞任に追い込んだチュニジアでは、政府統制下の経済システムで、農業、鉱業、製造業などが主な経済活動の分野になっている。近年、繊維以外の製造業、農業およびサービス部門では強い経済成長が見られるものの、すでに高率となっている失業率にはそれだけでは対処できないため、大卒人口の増大に伴う教育レベルの高い若い世代に失業者が多い構造になっていた。また、人口の約20%が総所得の約46%を所有する一方、低所得層の約20%は総所得のわずか約6%を占めるにすぎず、かなりの経済格差が生じていた。
現在、新しい国づくりの準備を進めているエジプトの経済活動の中心はナイル川流域である。エジプトは輸出依存型の経済で、製造業、観光業、スエズ運河の歳入で主として経済を支えている。しかし、国連の調査では、国民の生活水準は国際基準を下回り、1990年以降この傾向が続いている。また、国民の20~30%は貧困ライン以下の生活で、充分な食糧、清浄な水、適切な医療システムや教育に恵まれていない。一方、金持ちは、私立の学校や海外の大学で子供に教育の機会を与える余裕がある。エジプトも収入配分に格差があり、最も豊かな20%の国民が39%の国富を享受しているのに対して、貧困層の20%はわずか9.8%である。また、食糧不足が大きな問題になっている。
チュニジアのデモから影響を受け、エジプトとほぼ同時に抗議デモが発生したイエメンは、中東で最も個人所得が低く、貧しい国の一つで、慢性的な失業の問題を抱えている。減少しつつある原油資源の歳入にかなり依存しており、国のGDPの25%は石油が占めている。また、水、石油などの資源が減少する一方、人口は増加している状態である。インフレーションの結果、1990年以降、国民の生活水準は極端に落ち、賃金の価値も下がった。イエメン国民は、輸入食品に依存しているため、高い輸入食品に収入の50%以上を消費しなくてはならない。1990年代以降、約25%のイエメンの人口は貧困ライン以下の生活をしている。(つづく)
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