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2011-02-24 00:00
松木辞任は小沢の“地域政党”すり寄りの一環
杉浦 正章
政治評論家
難破船・菅直人丸から小ネズミがちょろちょろと逃げ出し始めている。しかし、今度の農水政務官・松木謙公辞任の動きは、党内抗争という本質部分に加えて、小沢一郎の選挙戦術に深く関わっているとみるべきだろう。いま売り出し中の名古屋市長・河村たかしの「減税日本」との提携だ。小沢グループは解散・総選挙となれば、壊滅的な打撃を被る方向だが、おぼれる者はわらをもつかむ。小沢は“地域政党”との連携でしのごうとしているのだ。松木は場合によっては「減税日本」からの推薦または立候補を視野に入れているとの見方もある。小沢別働隊16人組の離党に続く、小沢の側近中の側近である松木の辞意表明は、菅政権の土台がシロアリに食われてぼろぼろ崩れ落ちて行く様を見せている。
菅は為す術を知らないのが実態だろう。2月23日の党首討論でも開き直り的な「イラ菅」ぶりを見せたが、これは自公両党との予算関連法案での妥協をあきらめざるを得なくなった焦燥感の表れに他ならない。松木は、河村たかしとは親交が深く、小沢と河村の橋渡し役的な存在でもある。小沢が去る8日いち早く市長に当選した河村と会談したのも、松木の進言を受けたからとされている。会談で小沢は、新進党以来の知己でもある河村と意気投合、今後の連携を約した。河村が名古屋市民を引きつけた「減税」の主張は、マニフェスト至上主義に固執して、「消費増税反対」で菅政権を揺さぶり続ける小沢グループの主張とも一致できる側面を持つものである。
一方で小沢グループは、大阪府知事・橋下徹との連携を模索している。やはり“地域政党”である「大阪維新の会」との連携である。前総務相・原口一博の「日本維新の会」は、名称からして大阪のそれを包含しようとしているようにも見える。23日原口がその前身として立ち上げた政策集団「日本維新連合」も、小沢別働隊として“地域政党”狙いの側面をうかがわせる。しかしさすがに橋下は、政治を見る目が備わっている。小沢の“すり寄り”に警戒気味であり、22日「連携が国政についてということなら、一線を画さないといけない」と述べている。23日も、原口サイドからの誘いに「今回は引かせていただく」と拒否した。「大阪維新の会」は府議選などで民主党と激突しており、とても小沢の秋波に乗るわけにはいかないのも実態だ。「政治とカネ」がつきまとうグループと接近しては選挙にとってマイナスでもある。
小沢の切羽詰まった選挙戦術も前途多難だが、河村の「減税」選挙も次世代につけを回す“毒”をはらんでいる。だいいち名古屋市は1兆9000億円もの市債残高を抱えており、「減税日本」などと主張して大衆を煽るのは、まっとうな政治家のすることではあるまい。その場しのぎの「政治屋」の扇動である。河村は、まずこの市債残高を減らすことが先決ではないか。小沢も一地域の特異な現象を活用して、ようやく消費増税やむなしで固まってきた潮流にさおさすのは、いかがなものか。いくら苦し紛れでも“邪道”に走ってはいけない。西岡参院議長が22日、民主党議員が“地域政党”と連携の動きを見せていることについて、「地方の新しい動きにあやかろうという考え方は、国政を預かっている与党から出てはならない」と戒めたが、その通りだ。小沢もいくら窮地に陥ったとはいえ、すこしは国会議員としての“矜持”を持ったらどうか。“地域政党”は小沢にとっての“救いの神”にはまずなるまい。
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