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2011-02-16 00:00
鳩山は「国辱の人」をいつまで演ずるのか
杉浦 正章
政治評論家
沖縄県民は「抑止力」を方言で「嘘」を意味する「ユクシ」力と揶揄(やゆ)してきたという。前首相・鳩山由紀夫の発言など元々信じてもいなかったのだろう。しかし地元紙のインタビューで面と向かって「嘘だ」と認めて、舌を出されれば、激怒して当然だろう。琉球新報は「万死に値する大罪だ」と究極の表現を使って憤りをぶちまけている。遙か彼方にあった辺野古移転の実現が、鳩山「方便発言」の誘発した「沖縄の怒り」で、もう見えないほどに遠ざかった。いまや日米同盟の原点となった辺野古移転の日米合意すら、危ういものになりつつある。
「お気軽に方便などと罰当たり」と今朝の朝日川柳にあるが、広辞苑によると「方便」とは仏教用語で衆生(しゅじょう)を教え導く、巧みな手段。真理に誘い入れるために仮に設けた教えであるという。鳩山の場合は、俗にいう「嘘も方便」で使ったので、「罰当たり」ということになる。この「嘘も方便」には、単に鳩山一個人の人格上の欠陥にとどまらず、民主党政権の本質があると言わざるを得まい。いい加減な政策と嘘のつき放題で長い野党暮らしをしてきた性癖が、政権という国家にとって最も信用性が重視されるポジションに到達しても、抜けきれないのである。発言は政権の抱える構造的な欠陥をまたも露呈したものに他ならない。
民主党は、根拠のないマニフェストを5回にわたる国政選挙で唱え続け、自民党の敵失も利用して、ついに国民に信じさせてしまって、成り立った政権なのだ。首相・菅直人はその危険度にようやく気付いたようだが、時既に遅し。支持率は急降下して、取り返しが付かないところに到達した。防衛相・北沢俊美が「また数日たったら、違う見解が出るかもしれないので、あわててコメントするのは差し控えたい」と鳩山を侮蔑する発言をしているが、この対応もどうかと思う。気楽な一代議士の発言ならともかくとして、仮にも首相経験者であり、日米合意の当事者であったことが問題なのであり、担当相としてはしっかりコメントすべきであった。
琉球新報が「明らかに首相になってはいけない人が、この国を担う。民主党政権の限界も露呈している」と断じているが、その通りだ。「学べば学ぶほど海兵隊は抑止力を維持していることが分かった」と述べておきながら「あれは方便」では、言論を命とすべき政治家業は成り立つまい。「トラストミー鳩山」の舌禍はもう「どうかしている」の段階を通り越し、国の政治に「害毒」を流し始めた。ついに政府が2月15日の閣議で、前首相の発言の訂正を決めるという事態にまで至ったのだ。北方領土問題で歯舞、色丹の2島を返還対象の軸とする見解を示したことについて、「政府の考えとは、必ずしも一致していない」とする答弁書を決定したのだ。
自民党は衆院予算委員会への鳩山の参考人招致を要求したが、鳩山はまだ“生き恥”を曝し続けるのだろうか。みんなの党幹事長・江田憲司は「言語道断の発言で、即刻議員辞職をしていただきたい。こういう方を一国の首相に担いでいた民主党のクレディビリティ(信頼性)も根源から問われる」と述べているのが正解だ。鳩山はこれ以上国民への背信行為を重ねることをやめ、かって自らが主張していたように、首相経験者たるもの未練がましく政治の場に躍り出るのをやめるべきだ。いまはもう「国辱の人」でしかあり得ないことを悟るべきだ。
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