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2011-02-07 00:00
見通し不確実なエジプトの民主化運動
島 M. ゆうこ
エッセイスト
ムバラク大統領の退陣と民主化を要求するエジプト市民の抗議行動は連日続き、緊張と対立は日増しに激化している。1月25日から始まった平和的抗議行動は、2月2日に政府支持派集団が抗議者らを襲撃したため、暴力的対立に発展した。国連の報告によると、これまでに300人以上の死者および数千人以上の負傷者が出ている。ムバラク大統領が「9月の次期大統領選までは退陣しない」との声明を行う一方、反政府の抗議行動者らは、身の危険もかえりみず、ムバラク大統領が退陣するまで戦う強い意志をみせている。エジプトの抗議行動の特徴として、女性の姿が目だっている。デモの一週間前、ビデオ放映を通して、エジプトの若い女性が1月25日に「性別同等の抗議に参加」するよう訴えた。彼女は「人生で初めて自由、威厳、名誉、人権のために立ち上がる決心をした」と述べた。30年続いている独裁政治と汚職に決別し、女性の平等の権利を勝ち取るために、死も恐れないことを表明した。女性が二級市民として扱われている社会の大きな変改への第一歩になってほしい。カイロ中心部のタハリール広場に集まっている女性抗議者らは、エジプトがアラブ諸国でも大国でありながら、大半の国民が貧困に喘いでいるため、ムバラク政権の経済政策の失敗にも深い憤りを感じているようだ。
2月5日までの状況では、ムバラク政権は、政府に反対する者を反逆者扱いし、言論の自由を弾圧する「メディア戦争」を開始した。治安部隊は、記者の国籍を問わず拘束し、取材用機材なども没収した。メディアのみならず、人権保護の団体も標的にされ、人権保護活動に奉仕しているエジプトの主な組織、ヒシャム・ムバラク法律センターやエジプト経済社会権センターも警察の奇襲に遭遇している。暴力はエスカレートし、近くの高層ビルの屋上から狙撃兵が、タハリール広場に集まった反政府の抗議者らを銃撃し、この現場で数名が射殺されている。政府支持派集団による反政府抗議者への攻撃は、エジプトの主要都市に拡大しつつある。ムバラク大統領支持のデモ参加者は秘密警察であるといわれているが、ムバラク大統領がこのような暴力を是認し、脅威と不安を煽ることで反政府勢力を抑えようとしているのは、明らかである。
タハリール広場で、ある記者が女性抗議者の一人に「オバマ大統領に何を期待するか」と訊いたところ、「エジプトに声明を送り続けることを止めてほしい」と述べ、「外部の干渉は一切ほしくない。自分達で解決する」と答えた。確かに、オバマ大統領は慎重な言葉で、民主化のプロセスを速やかに行うように、ムバラク大統領に圧力をかけている。国連の事務総長も、直ちに必要な変革および改革を実施するように、要請している。抗議者らがムバラク大統領の辞任を強く要望しているにも関わらず、ムバラク大統領は「今引き下がれば、混乱が生じる」と述べ、権力への執着心を覗かせている。2月6日の『ワシントン・ポスト』紙によると、ムバラク大統領には「権力を維持するための戦略」があるという。最近新たに「二つの強力な柱を立てた」という。一つ目は、新しい副大統領の任命であり、二つ目は、エジプト議会の最大党の党主の人事である。両人とも「愛国者で、汚職のない政治家として歴史的に成功している」人物であるらしい。しかし、この二人は「ムバラク大統領の古い友人であるため、どのような状況でも彼を失望させるようなことはしない」とし、「二人を起用したことで自分の足元を安全にし、立場を強化しており」、一石二鳥ならぬ「一石三鳥だ」と同紙は述べている。
このような戦略は早期の退陣に向けた準備とも考えられるが、その点は不明である。一方、テレビ演説を利用した心理的戦略で、ムバラク大統領はその支持者を増やす努力もしている。これが、反政府派とムバラク支持者との対立を強める一因にもなっている。しかし、2月6日には、ムスリム同胞団を含む反政府派の代表との会談の結果、新副大統領が、憲法改正の計画と言論の自由を保証する声明を行ったが、抗議者が納得するかどうか、これも不明である。ムバラク本人の声明どおり9月までは辞退しない場合、表面的変化だけでは満足しない抗議者らは、簡単には「タハリール広場を去らない」ことも予測される。反政府抗議者らは、強い決意と団結の下に民主化への第一歩を踏み出したものの、革命運動は長期化する可能性もあり、今後の見通しは不確実であるため、更に注目していきたい。
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