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2011-02-07 00:00
菅のマニフェスト放棄路線で「政策」の「政局」化は不可避
杉浦 正章
政治評論家
「予算関連法案不成立による世論の反発を恐れない」と自民党副総裁・大島理森が腹をくくっている。その理由は、「もっと大きな問題を民主党政権は抱えているからだ」という。大島の指摘は、首相・菅直人のマニフェスト大転換路線、つまり“変節”を指す。たしかに菅が取り組む「社会保障政策と税制改革の一体化」路線そのものが、マニフェストの大修正を意味していることは間違いない。「過去の数々の国政選挙で訴えてきた路線を転換するなら、国民の信を問うべきである」との主張は説得力がある。国会審議は、2月8日の衆院予算委集中審議、9日の党首討論でいよいよ佳境を迎えるが、「政策」の「政局化」は避けられぬ構図となって来た。菅はこのところ立て続けにマニフェスト修正に言及している。マニフェストの一丁目1番地である「子ども手当」の大幅修正を言明したかとおもうと、マニフェストの根幹である「年金制度」も大幅に変えることを示唆している。これは経済財政相に与謝野馨を任命したときからの“必然”であった。三顧の例で迎える以上、仕事をしやすい環境を整える必要があり、その環境を整えつつあるのだ。また修正の方針を示して、自公両党との妥協点を模索しようとする意図も見られる。
その中でも、最重要の転換は、菅が厚生労働副大臣・大塚耕平に「死ぬ気でやってほしい」と指示した「4月までの社会保障政策の見直し」だ。民主党は、過去3回の衆院選と2回の参院選で「年金制度の一元化」と「最低保障年金の7万円支給」を唱えてきた。「一元化」とは国民・厚生・共済の3年金を統合しようというものであり、社会主義の流れをくむ政党らしく、年金の平等性を狙ったものである。その上で「最低7万円の年金」を支給しようというものだ。しかし厚生、共済両年金は、やろうと思えば統合できないわけではないが、全く異質な国民年金と厚生・共済両年金の統合は、不可能視されている。加えて、この時期に「7万円の最低年金」をばらまこうという訳だが、財源上の根拠は全くない。財源上の根拠がないから「消費税導入しかない」という連動の仕方であろう。“命がけ”の取り組みが必要になるというのは、さすがに菅も、マニフェストの根幹に触れる修正となる上に、年金7万円の夢で“釣り揚げて”きた有権者の反発を買うのは、不可避であると悟ったに違いない。
民主党案を大幅修正して、保険方式を軸とする現行制度を基本とする自公案に大接近せざるを得ないだろう。そうなればマニフェストとは絶対に整合性がとれない。いずれにせよ4月にまとめて6月の消費税導入への理論的根拠を作る必要にも駆られているわけである。社民党政審会長・阿部知子が「社会保障を隠れ蓑にした大増税」と批判するのは、珍しく一理ある。消費増税への理論武装、悪く言えばアリバイ作りであることは確かだ。こうした菅政権の抱える大矛盾を背景に、冒頭述べた大島だけでなく、公明党も「予算関連法案を通すことにはならないと思う」(幹事長代理・高木陽介)と断言する事態に至っている。自公両党は、予算委集中審議と党首討論を通じて、マニュフェストと菅の路線の矛盾を突くとともに、その欺瞞(ぎまん)性を明確にして、総辞職か、解散を求める流れへと持ち込もうとしている。自公両党が、世論の反発を受けてでも、予算関連法案の成立を遅らせようとしている背景には、「菅政権の欺瞞(ぎまん)性と“変節”」と「関連法案の遅延」のバランスをとった場合、国民を説得することは可能だという判断がある。
従って、明らかに自公両党は「3月危機→4、5月総選挙」に照準を定め、集中審議と党首討論に臨むことになるだろう。菅がだらだらと6月に「一体改革」で結論を出すのを待っていたら、そのまま解散・総選挙を回避して、通常国会閉幕に持ち込まれ、逃げ切られる恐れが濃厚とみられるからだ。従って、自公は予算の年度内成立のめどである3月2日衆院通過はやり過ごしても、関連法案だけは「人質」にとった対応ということになる。ぎりぎりの攻防段階に今週から入ることになるが、本来政策論議の最たるテーマが、政局と密接不可分の状況で日々推移してゆくことは間違いない。
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