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2011-01-30 00:00
(連載)国防費削減でアメリカの世界戦略は大丈夫か?(3)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
大国志向の中国の脅威を含めた世界の脅威に鑑みて、保守派とネオコンからはオバマ政権の国防費削減に批判の声が挙がっている。歴史学者のアーサー・ハーマン氏は、アメリカが戦時下にあり、しかも新しい脅威が台頭する現状で、オバマ大統領とゲーツ国防長官による一方的な軍備削減は不適切だ、と警告している。ハーマン氏は「現在は第二次世界大戦と冷戦の直後のような平和時ではない」と述べている。ハーマン氏はアメリカ軍の近代化と費用効率の向上には同意しているが、ロシアと中国の拡張主義を封じ込めるためには、充分に大きな規模の軍事力を維持する必要があると述べている。ハーマン氏は、さらに「イラクとアフガニスタンでの戦争負担を理由に性急な国防費削減に走るようなことがあってはならない。軍事支出こそ最善の景気刺激策だ」と主張する。
技術的な波及効果を考慮すれば、私はハーマン氏の主張に同意する。知識こそ、我々先進国が低賃金労働の新興経済諸国より優位にある分野である。『ウォールストリート・ジャーナル』紙によると、今日のアメリカの国防支出は、戦闘作戦の支出を差し引くとGDPの3.8%に過ぎない。これは従来の平和時の平均であった5.7%の2/3に過ぎない。戦闘支出を含めても、国防費の総額はGDPの4.6%である。アメリカン・エンタープライズ研究所のトマス・ドネリー常任フェローとゲーリー・シュミット常任研究員は『ワシントン・イグザミナー』誌への共同論文で、オバマ政権が国防支出を教育費の効率性と同じ次元で語ろうとする姿勢を批判している。両氏は「効率的な予算の名の下に世界の中でのアメリカの役割を低下させてはならない」と主張する。
12月28日にブルッキングス研究所で行なわれたパネル・ディスカッションで、ロバート・ケーガン上級研究員は「なぜ財政赤字を口実にした軍備削減がアメリカの国益を損なうのか」という基本的な点について述べた。「アメリカの経済的繁栄は、自らの軍事力に守られた自由主義世界秩序によって保証されている。性急な軍事削減によって、戦間期と同様な孤立主義の過ちを繰り返すことになってはならない」と述べている。
最後に、ジョン・ボルトン元国連大使がそのツイッターで語った「戦時下で、しかも海外での安全保障の脅威が増大しているこの時期に、ゲーツ国防長官の国防費削減によってアメリカの安全保障は脆弱になり、本土の防衛も覚束なくなるだろう」との一言をもって、本稿の結論としたい。(おわり)
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