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2011-01-29 00:00
(連載)国防費削減でアメリカの世界戦略は大丈夫か?(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
国防支出は財政規律と軍事的要求だけで議論されるべきものではない。また、アメリカの国防政策は主要な民主主義同盟諸国の政策と整合させる必要がある。11月19日から20日にかけてリスボンで開催されたNATO首脳会議では、アナス・フォー・ラスムッセン事務局長が「新安全保障概念」を公表し、9・11後の世界の安全保障に取り組むために「NATOをよりグローバルで、開かれた、効率性の高い組織にする」としている。ミサイル防衛やサイバー攻撃といった新しい問題が主要課題となっている。反乱分子鎮圧戦略に関して、NATOは、アフガニスタンでの経験を踏まえて、地域社会の再建の支援と現地治安部隊の能力向上を支援する民政部門を設立する。
その第一歩として、NATOは2014年の権限委譲を前に、アフガニスタン政府、軍、警察の訓練を行なうとしている。また、ラスムッセン事務局長とロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領は「相互の関係改善により、テロ、海賊、アフガニスタンの治安維持につき協力を深めてゆく」と宣言した。ラスムッセン事務局長は、さらに「NATOはロシアとミサイル防衛の協議を行なう」とさえ述べた。これは、モスクワでのオバマ・メドベージェフ会談の際に米露関係リセットの障害となっていた問題である。オバマ政権は、アメリカ外交に挑戦を突きつける国々との協調路線を歩もうとしているようだが、アメリカが簡単に多極化を受け入れてもよいのだろうか?ここでジョン・マケイン上院議員が11月15日に外交政策センターで行なった講演に言及したい。
マケイン議員は、中国が「真珠の首飾り」戦略をとっていることに関して、「太平洋およびインド洋諸国との安全保障パートナーシップが、中国との致命的な紛争を未然に防ぐために必要だ」と述べた。また、マケイン議員は「アジアとの自由貿易協定によって、この地域でのアメリカの政治的存在感を高められる」とも述べた。ロシアが再び冷戦を起こすことは考えにくいが、クレムリンの専制政治と欧米との衝突は避けられない。イランに関して、マケイン議員は、オバマ大統領が先のイラン大統領選挙で民主化運動を積極的に支援しなかったことを批判した。マケイン議員は、ゲーツ国防長官の歳出削減計画に理解を示したものの「世界の安全保障に占めるアメリカの役割を低下させてはならない」と強く主張した。
現在、パックス・アメリカーナとも呼ばれる自由主義世界秩序に対する最も大きな挑戦者は、「平和的な台頭」を進める中国である。アメリカ側では中国の急速な軍事力拡大に警戒感を強めているが、中国の梁光烈国防相は、アメリカのゲーツ国防長官との会談の際に、こうした西側諸国の警戒感に殆ど考慮を払わなかった。ステルス戦闘機に見られるような急速な技術進歩にもかかわらず、アメリカの情報当局は中国の軍事力の向上について具体的な情報を得ていない。航空専門誌『アビエーション・ウィーク』は「新型のJ-20ステルス戦闘機のエンジン・システムはアメリカのF-22戦闘機ほどにはステルス技術に対応しきれていないので、現段階ではこの戦闘機ではアメリカの戦闘機に太刀打ちできない」と述べている。とは言うものの、中国がアメリカの覇権に挑もうという野心をあらわにしたことには違いない。(つづく)
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