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2006-05-24 00:00
「東アジア人のアイデンティティ」について語るのは、まだ早い
田中淳子
大学生
日・ASEAN対話「東アジア共同体へのロードマップ」報告書によれば、シンガポール国際問題研究所のハンク・リム研究部長は、「今後25年くらいは、ソフト・パワーが経済力や軍事力等のハードパワーに代わり重要性を増してくる。具体的には映画、テレビ、ゲームといったメディアだ。これを大いに活用して、東アジア人としてのアイデンティティの感覚を育てるべきだ」と語っていますが、私の見方は少し違います。
「東アジア」とは何でしょうか。「ASEANプラス3」の13ヶ国でしょうか、それとも「ASEANプラス3プラス3」の16カ国でしょうか。メンバーシップの問題が未解決なままでは、「東アジア共同体」のコンセプトを明確に語ることは不可能です。この理由だけでも、「東アジア人のアイデンティティ」の育成を議論するのはまだ時期尚早だと思います。
たとえ東アジアの都市中間層や若者層が文化的共通性を共有していても、「東アジア人のアイデンティティ」なるものが将来形成されると安易に期待することはできません。ASEAN諸国の文化・伝統・社会は実に多様であり、オーストラリアやニュージーランドなどは、その文化的基盤が明らかに「ASEAN+3」と異質です。現に「私は東アジア人だ」と認識する人がどれだけいるでしょうか。アイデンティティの醸成よりも、まずは経済や安全保障の分野で地道な協力を進めることから取り組むべきでしょう。
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