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2010-12-16 00:00
(連載)新「防衛大綱」の方向性は妥当だが(1)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
12月17日に発表される次期「防衛大綱」の内容がほぼ明らかとなって来たが、その方向性は、それなりに妥当なところに落ち着いたように思う。中国の脅威を明確に意識して、冷戦期以来の「基盤的防衛力」整備構想を放棄し、新たな概念として「動的防衛力」の構築を盛り込んだことが、そのことを象徴している。
「基盤的防衛力」構想とは、1976年策定の「51大綱」において示されたもので、防衛白書によれば、「我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となって我が国周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」という考え方である。一見、もっともらしいように思われるが、実態は、全国に均等に部隊を薄く広く配置するという非効率なものであった。しかも、自らが力の空白となって不安定要因とならないように必要最小限の基盤的な防衛力を保有すると言いながら、実際にはそれには程遠かった。
そして、何よりも問題だったのは、どんな脅威に対応するのか、そのターゲットを示していなかったことである。「基盤的防衛力」構想の概念は、我が国の防衛戦略の阻害要因の一つであるとすら言えるが、次期「防衛大綱」で完全に転換されることになったのは、歓迎すべきことである。新たに導入される「動的防衛力」の概念は、特定の脅威や事態に対応して、自衛隊の部隊を機動的に運用する態勢作りを目指すものである。具体的には、対中国を念頭に置いた、南西諸島重視シフトである。
個々の論点のうち、まず、陸自の編制定数削減を1000人にとどめた点は、評価できる。2004年の「16大綱」策定の際には、財務省が陸自編制定数を従来の約16万人から約12万人に減らすよう強硬に主張し、激論の末、現行の15.5万人になったということがあった。今回は財務省側は、14.8万人に減らすよう求めたが、南西諸島の防衛強化に一定の人員確保が必要であるという北沢防衛相の意見が、割りとすんなりと通った。南西諸島の防衛強化というと、「陸は減らせ」という議論になりがちだが、そう単純な話ではない。海空の充実が必要なのは当然だが、最終的に敵の上陸を食い止めるのは、陸自の役割である。また、次期「防衛大綱」では、PKO参加5原則のあり方を検討すると謳っているのだから、自衛隊の国際平和維持活動などでの海外派遣が増えるはずであり、その人員確保のためにも大幅削減は不適切である。(つづく)
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