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2010-12-09 00:00
政局、再編含みの「激動期」に突入の予感
杉浦 正章
政治評論家
民主党の党内抗争に火がつき、党分裂から政界再編にも結びつきかねない「政局」が始まった。このままでは、「小沢切り」で政権浮揚を目指す首相・菅直人と、両院議員総会を軸に政権を揺さぶろうとする元代表・小沢一郎の主張は、どう見ても相いれない。激突・崩壊のコースをたどろうとしているように見える。これに元首相・森喜朗と読売新聞グループ本社会長・渡辺恒雄が明らかに連動した形で、大連立の動きを再開させ、1月の通常国会に向けて、政界は激動の様相を深めそうだ。12月7日夜の会合における小沢の反応ぶりは、ただ事ではないと思っていたが、やはり菅と幹事長・岡田克也が「小沢切り」に動くのを察知していたのだ。ただ事でないというのは、小沢が口を極めて菅政権を批判し、同席議員に「年内に両院議員総会を開催するように動いて欲しい」と指示したからだ。8日の小沢側近の党幹部の発言は、これを受けたものだろう。「野党は国会審議に応じない。仙石さんを代えることが、先だ」とまずは「仙谷切り」で対決しようという方向を打ち出した。
小沢の戦略は、両院議員総会を、場合によっては議員の3分の1の要求で年内に開催し、惨敗必至の茨城県議選と仙谷更迭問題をテコに、菅を追い詰めようというところにある。自らの「政治とカネ」が主因で敗北することなど棚に上げた、誠に身勝手な論法でもあり、世論の支持は得られまい。もちろん小沢の狙いは「仙谷切り」だけではない。最終的には「菅降ろし」も視野に入れているだろう。また8日夜に鳩山兄弟に新党改革代表・舛添要一を入れて会談したのも、「新党」の選択があり得ると言う“示威行為”であろう。一方これに対して菅は8日、対小沢戦略を急浮上させた。岡田に対して「国会の議決によって小沢の政治倫理審査会への招致を決めるように」と指示したのだ。菅は小沢が議決による要求に応じない場合は、小沢に対して「離党勧告」をすることまで視野に入れているものとみられる。菅には「小沢切り」によって支持率を回復させようという思惑があるに違いない。しかし「予算編成の重要な時期に、党内抗争を激化させて、内紛にうつつを抜かしていていいのか」という批判が、必ず世論として形成され、支持率が簡単に上がるとは思えない。むしろマイナスに動く可能性すらある。
いずれにしても、菅と小沢の対立の構図は、抜き差しならぬものとして浮上してきている。このまま激突すれば、党分裂もあり得る事態に発展しかねないとみるべきだろう。もっとも小沢が離党しても、同調者が大量に出る可能性は少ないだろう。とても代表選挙での小沢支持者200人がそのまま動くのは無理だ。しかし、民主党が衆院でも過半数割れとなる可能性はある、と見なければなるまい。そこでまたまた急浮上したのが「渡辺工作」だ。党内抗争に火がついたときに、なんでまたと思えるし、いささかピントのズレがあるのではないかとも思える。しかし、2007年の連立工作は失敗したが、今回は用意周到にみえる。7日夜には鳩山由紀夫とも会談している。以下は推測だが、渡辺は、まず中曽根康弘の秘書だったころから可愛がっていた、たちあがれ日本共同代表・与謝野馨を使った。11月19日に、与謝野を菅と会談させたのである。まず大連立の話だろう。また8日に森喜朗が菅と会ったのも、超党派の硫黄島訪問は表向きの話で、渡辺と示し合わせた上での大連立の話に決まっている。
同時に渡辺が自民党総裁・谷垣禎一と会ったのも、森との連係プレーだろう。与謝野と菅は消費税増税論者であり、方向としては消費増税での自民・民主大連立の流れを目指しているものと見る。いくら何でも、渡辺が民主党内の権力抗争にまでクビを突っ込めるとは思えないから、党内抗争で小沢が離党した後の、「健全な勢力」(与謝野)と自民党の「消費税連立」を目指すのだろう。問題は自民党が応じるかどうかだ。役者が森では、党内的に反発を招きかねないし、自民党の大勢としては、ここまで菅をぼろぼろにして、あと一押しと言うときに、いまさら大連立かという思いもあろう。このまま民主党を追い込んで、早期に解散・総選挙を実現させて政権奪取を目指す流れだろう。しかし、政局は通常国会にかけて何があってもおかしくない波瀾万丈の段階に突入するだろう。大連立の選択も、役者がそろっては無視はできない。
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