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2010-12-07 00:00
ウィキリークスは、国際関係のレアなお宝
川上 高司
拓殖大学教授
ウイキリークスによる米外交文書の暴露はとるに足らないゴシップが多いが、中には外交の裏舞台を明らかにするものも含まれている。国際関係学の分野ではまさに「宝の山。生きた外交が勉強できる」と諸手を挙げて歓迎している。なにしろ現在進行形の外交の裏側を知ることができるという滅多にない機会である。たとえば、中国と北朝鮮の関係についてもリアルな報告がなされている。
暴露された文書によると、「中国は北朝鮮にはイライラが沸点近くまで募っており、韓国が朝鮮半島を統一することを望んでいる」、「金正日が死亡したら北朝鮮は崩壊し、30万人の難民が中国国境へ押し寄せるだろうから、中国は難民を追い返すつもりである」などといった報告がワシントンへ送られている。中国は長年北朝鮮を支えてきた最大の支援国家である。その中国が見限ったとなれば北朝鮮の未来は大変暗い。
中東情勢も複雑である。イスラム国家と敵対しているはずのイスラエルが、実は裏舞台ではアラブ諸国と緊密な関係を構築していることが発覚した。2009年当時のイスラエルのリブニ外相は、アラブ首長国連邦のザヤド外相との間に親密な関係を築いていた。表舞台では両国は国交断絶中である点に注目したい。イスラエル情報部のモサド長官はサウジアラビアと関係を持っていた。さらにはカタールとイスラエルも交流があったことが暴露された。これらのイスラエルと湾岸諸国との関係を見てみると、サウジアラビアがイラン攻撃を主張していたというのも、あながち突飛ではなさそうである。イランのアファマデネジャド大統領が今回の暴露を「イランとアラブ諸国との関係を破壊しようとする心理作戦だ」と非難するのもあながち妄想でもない。
今回のリークはグローバルな反応を引き出した。イタリアのベルルコスーニ首相は「軽薄でお祭り好き」とけなされたことを笑い飛ばした。同じイタリアの外相は激怒して「深刻な事態を招く」とおかんむりである。ドイツ政府も、イラク戦争に反対したという経緯からか、いまひとつ同盟国として信頼されていないことがわかり、「影響は深刻」と受け止めている。ロシアはメディアが暴露を無視、ロシア政府は「コメントする前に内容を精査する」と不気味である。中国も今のところ静観の構えを崩していない。政治レベルではなんであれ、外交の裏側を実況中継のように楽しむことができるのは、まさにグローバル社会、ネット社会ならでは。世界がそれほどに狭くなった証左でもあろう。
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