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2010-11-17 00:00
菅舌禍内閣、危機感なく漂流
杉浦 正章
政治評論家
「仙谷舌禍大王」が居座っているかと思えば、今度は「柳田舌禍法皇」だ。そうかと思うと、経済産業相・大畠章宏が、中国にレアアースの問題で「右の頬を打たれたら、左の頬を向けよ」と言わんばかりの「マタイ伝大臣」として登場。まさに「舌禍・バラバラ内閣」の様相だが、統括する首相・菅直人は「最近は少し人間ができてきたのか、批判を右から聞いても、左にすっと流れていく」と、とてつもない危機感のなさ。臨時国会で漂流状態では、通常国会では難破必至ではないか。法相・柳田稔の「法相は、二言あればいい」発言に野党がいきり立つのは、「バカにバカにされた」(自民党幹部)という思いが濃厚だからだ。
たしかに 「個別事案については、お答えを差し控えます」「法と証拠に基づいて適切にやっている」の二つの答弁で「切り抜けてきた」と言われれば、野党も怒るし、国会ではその通りの答弁が目立った。まさに「バカの二つ覚え」ではないか。予算委の質疑を聞いていると、柳田は質問への「あさっての答弁」が多い。分かっていないのだ。紛れもない政治主導で中国船船長釈放を検察当局に押しつけた後、誰も問題視していないのに「これは指揮権発動ではない」と談話を発表して、裏での指揮権発動を暗に示唆してしまった。その後「私が釈放を決める前に…」と言いかけて、口をつぐんだ。“語るに落ち”た発言だ。「ビデオを見ないのは、図面を見れば分かるから」発言は、船長釈放問題の本質を全く理解していない。いやはや開いた口が塞がらないような法相だ。
また、日経だけが報じているが、経産相・大畠は11月16日午前の閣議後の記者会見で、「中国とレアアースの代替材料やリサイクル技術を共同研究したい」との意向を示した。アジア太平洋経済協力会議 (APEC)開催中の13日に張平・中国国家発展改革委員会主任と会談した際に、伝えたのだという。これは一体どうしたことか。13日の菅とオバマの日米首脳会談で、レアアース代替材料についての共同研究で合意しているが、その裏で中国にも共同開発を提案しているのだ。米国の了解があるとは思えない。日経は、経済面からとらえて論評を加えていないが、外交面から見ればレアアースの問題はそもそも中国が輸出規制をかけて、世界的なひんしゅくを買った事件だ。その中国に対して日本政府が既に研究が進んでいる日本の技術を提供しようというのか。
対中方針の根幹にかかわる問題を、閣議で決めもせずに経産相独自の判断で決めたのだろうか。資源恫喝外交を展開する中国に、ここまで卑屈になるとは驚いた。ビデオ流出どころではない、日本の生命線である先端技術流出ではないか。まさに外交に「左の頬を向ける」マタイ伝の世界を持ち込んでいる。そうかと思えば、自らの発言の愚かさを棚に上げて、官房長官・仙谷由人が言論統制にもつながりかねない発言を繰り返し、防衛相・北沢俊美も同様に言論統制につながりかねない動きを見せている。産経新聞によると、自衛隊を後援する民間団体「航友会」の会長が「民主党政権は早くつぶれてほしい。皆さんも心の中でそう思っているのではないでしょうか」とあいさつしたのに激怒して、事務次官通達を出させて「極めて不適切な発言」と批判したのだという。要するに、この内閣は近来まれに見るほど統制が取れていないまま、閣僚が好き勝手な発言を繰り返し、漂流をし始めた感じが濃厚だ。責任はもちろん菅のリーダーシップ欠如にある。
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