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2010-11-01 00:00
(連載)台頭する中国への長期的な取組み(2)
湯下 博之
元駐フィリピン大使
第一は、習近平氏および同氏をとり巻く人々に日本の立場や考え方を充分にインプットする働きかけである。習氏が実際に最高権力者となる迄の間に、同氏の頭づくり(政策構想づくり)において、日本についての正しい認識や日本の立場や事情についての正確な理解を踏まえたものになるようにする働きかけである。そのような働きかけは、政府を中心としつつも、政治家、学者、報道関係者をはじめ種々の人々によってなされ得ようが、大切なことは、自分の売り込みといった私利私欲の立場からではなく、国としての日本の立場や考え方をよく理解させ、意思疎通と信頼関係のルートを築くことである。
第ニは、日中両国間に国民レベルの相互理解と信頼の関係を築くための人物交流の促進である。日中間の最大の問題は、国民レベルの相互理解と信頼関係の不足である、といっても過言ではない。青少年交流、文化交流、地方レベルの交流は特に重要であり、官民を挙げて重点的に実施すべきである。私は、日本に3年間研修で滞在した中国人の青年が、日本に住んでみて、日本が中国にいた時に聞いていた国とは大きく違うことを痛感したので、帰国後は友人達に「日本は中国で言われているようなひどい国ではないことを伝えたい」と述べるのを、聞いたことがある。交流なしには、相手国についてのゆがんだイメージの是正は困難と思われる。
第三に、米国や東南アジア諸国、インド等と協力して、中国が「責任ある大国」になるよう種々の分野で働きかけることである。東アジアの将来を考える上でも、日中が良好な関係になり、米国とも協調して地域の安定と発展を図る以外に、明るい未来は描き難い。ヨーロッパで長年敵対関係を続けたドイツとフランスが手を組んでヨーロッパ統合の中心となった例を参考にすべきである。(おわり)
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