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2010-10-26 00:00
批判一色の鳩山「引退撤回」発言
杉浦 正章
政治評論家
出処進退のことわざで言えば、「気の利いた化け物は引っ込む」はちょっとかわいそうだが、「長居するサギは汁になる」くらいが適当か。3歩歩いて前言を撤回してきた前首相・鳩山由紀夫が、次の総選挙に出ないとする“引退公約”をまたまた撤回した。政界、言論界の反応は、まずあきれ、首相時代の「存在の絶えられない軽さ」を思い起こし、せきを切ったように反発する。一人の政治家の進退の「進」に、国論がこれほど一致した例を知らない。秋だからではないが、ものの哀れすら感ずる。
鳩山が幹事長・小沢一郎を道連れに退陣したのを、日本の政治のためになると喜んだのは、筆者だけではあるまい。とりわけ退陣と同時に「総理大臣たるもの、その影響力を行使しすぎてはいけないと思っている。従って、私は次の総選挙には出馬いたしません」と政界引退を明言したことは、日本人の好きな潔さすら覚えたものである。もっとも「どうせまた変わる」と思ったのも、筆者だけではあるまい。野党が一斉に反発したのはもちろんだが、公明党代表の山口那津男の「前首相の立場の人が進退を翻すことは、国民の信頼を損なう。政治活動を続けることが民主党の役に立つどころか、国民の不信を増加させる。その点の自覚が乏しい」あたりが、一番気が利いた発言だ。
マスコミも、全国紙から、くだらないコメンテーターに至るまで、批判一色だ。読売新聞は10月26日付の「編集手帳」で、「持病のごとき言葉の軽さには慣れたつもりでも、民主党とは言葉をかくもぞんざいに扱う政党なのか――と、世間はほとほとあきれよう」と、「持病」にさじを投げ、「オウンゴールで敵(野党)に塩を送るつもりならば、その人の「友愛」精神なるものは筋金入りだろう」と、見事に皮肉った。朝日に至っては社説で「前言撤回は残念でならない」と書いた。記事では精神病理学者まで引っ張り出して、「恵まれた環境で育ち、優柔不断の性格で政治をやって来た」「私情と政治判断を混同していることに気づいていない。この程度で政治家になれるのか」とコメントさせている。これも「ほとんどビョーキ」扱いだ。議員辞職や在職中の死を惜しまれた首相は多いが、引退しないことを社説で「残念」と「惜しまれた」首相経験者は珍しい。
鳩山は「辞めるの、やめた」理由について「党の状況が思わしくないから」と述べているが、党の状況を思わしくなくしているのは、ご本人と盟友・小沢一郎であることをとんと忘れている。国内の反発にハノイで25日「国難といえるときに、自分だけ辞めて『はい、さようなら』でいいのか」と反論した。しかし、普天間問題といい、「政治とカネ」といい、存在自体が「国難」のお方が言う言葉ではあるまい。 小沢は「御輿は、軽くて、パーがいい」が口癖だが、小沢の発想は、ことごとく国を悪くしている。鳩山も、小沢も、いまからでも遅くはないから、「辞めるのを、やめることを、やめる」べきだ。
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