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2010-10-21 00:00
都知事選候補選びで“舌戦”スタート
杉浦 正章
政治評論家
恐らく都知事選候補に相当困っているのだろう。自民党幹事長で都連会長でもある石原伸晃が「父でもう1回」と言いだした。民主党が行政刷新相・蓮舫(42)を立てた場合、太刀打ちできるのは石原慎太郎しかいない、という判断だろう。しかし、まだ話題の段階だが、蓮舫が立てば、参院選得票数は171万票。とても4期目、78歳の老人に太刀打ちできる相手ではあるまい。石原伸晃発言を機に、来春の都知事選候補をめぐる舌戦がスタートした形だ。石原伸晃は、10月20日の日本記者クラブの会見で、父親について「家族的にはそろそろ辞めてもらいたいと思っているが、都連会長としては、最後に困ったらもう一回やってもらいたい」と心中を吐露した。
「先日、新党改革の荒井広幸幹事さんが電話してきて、『舛添さんは間違いなく都知事選に出る』と言っていた。『この話は、言っていいんだね』と荒井さんに聞いて確認してある」とも述べた。しかしこの言い回しはおかしい。何も荒井に「言ってもいいか」と念を押すまでもなく、いまや、落ち目の新党改革代表・舛添要一も宮崎県知事不出馬の東国原英夫も「都知事になりたくてしょうがない」というのが、永田町の常識だ。荒井のせいにして、二人を芽のうちに摘んでしまい、父親の4選出馬を援護射撃したに違いない。石原伸晃は幹事長代理時代の2008年に、慎太郎の新銀行東京破たん寸前の大失政でも援護射撃しており、父親の意向はよく聞く関係にあるようだ。舛添は怒って否定したが、石原の意図が「つぶし」にあることを感じ取ったから、頭に来たのだろう。
一方で、20日夜には鳩山兄弟が会合し、「いま人気のある蓮舫行政刷新担当相が出馬すれば、勝てるのではないか」との認識で一致したという。ずっこけ兄弟とはいえ、いいところを見ている。蓮舫が都知事選に勝てば、来年春には予算関連法案をめぐって、よれよれになっている民主党政権へのカンフル剤になることも確かだ。候補がそろっていない自民党と民社党に候補名が上がったが、まだまだ曲折がある。しかし、石原対蓮舫の戦いとなれば、石原に勝ち目はない。また東国原でも、舛添でも、蓮舫には勝てまい。都庁では最近石原の求心力が落ちて、幹部も長期のプロジェクトは石原に相談しない状態にあるという。本人も揺れているようだ。4選出馬について、「無理だね。年寄りをいじめないほうがいいよ」と記者会見で述べたり、「心境は複雑に変化している」と、思わせぶりな発言をしたりしている。息子を使ってマスコミの反応をさぐるため、観測気球を上げさせた可能性もある。
永田町では「蓮舫に勝てるのは北野武(63)しかいない」との見方がでているが、これも単なる話題に過ぎない。自民党が引っ張り出せるかどうかだ。4,5年前には民主党最高顧問・渡部恒三が「北野武を民主党代表に担ぐ」と漏らしていたくらいだから、民主党との関係なら悪くない。そのほか経済財政相・海江田万里(61)、副知事の猪瀬直樹(63)、自民党総務会長・小池百合子(58)、前横浜市長・中田宏(46)などの名前が挙がるが、まだ海のものとも山のものとも見分けが付きがたい。いずれにせよ、石原発言で都知事選候補をめぐる駆け引きが本格化した。
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