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2010-10-18 00:00
(連載)ヨーロッパで広がる反移民感情の波(3)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
『ワシントン・ポスト』紙によると、イギリスでは、保守派が主体となった新連合政府が、失業率を下げる為、EU加盟国以外の移民の受け入れを一時的に停止して、外国人雇用を減らす構えを示しており、「アメリカ人でさえ、長期の労働ビザ取得が難しくなる」可能性がある。アメリカが移民に反対する理由と同様で、イギリスでも「病院や学校などの公的サービス機関でスペースがなくなってきている」というのが一般的な苦情のようだ。
総体的に、自国の言葉や血縁を重んじる有権者は、ヨーロッパ諸国の多くの都市でモスク崇拝者や伝統的なイスラム教徒の衣装に身を包んでいる人口が増えている現状に反発を感じているようだ。政治的反イスラム運動は、最近オランダ、スウェーデン、スイス、オーストリアでも成功を収めている。
上記のように、移民が悪の根源のように扱われている現在の西洋諸国の風潮をどうみるべきか。アメリカと同様、安全性の過剰強調などに見られるように、9・11の後遺症も理由の一部として考えられるが、私は、三つの側面において人類の歴史は何の変化も進歩もしていない証拠だと考える。ひとつは、国籍、人種、皮膚の色、宗教及び言語を含む文化の違う“他人”に対する恐れと猜疑心である。もうひとつは、自分の文化がもっとも優れ、“他人”の文化は自分のものより劣ると無意識に信じる人間のエゴイズムである。最後に、移民又は外国人という“他人”に対する恐れ又は嫌悪感、あるいは猜疑心を正当化するため、何らかの責任の矛先を“他人”に向ける人間の身勝手さである。これら奥底に潜む人間の本質が目に見えない因果となって、人類は戦争の名のもとに殺戮を繰りかえしてきた。
ヒトラーによるユダヤ人やジプシーの大量虐殺は、まさにこれらを象徴した歴史的1例である。ヒトラーは、誇り高きインド・ヨーロッパ語を駆使した先祖を持ち、ブロンドの髪、青い目、そして、白い肌のアーリア人種が世界で最も優れていると信じていた。また、1920年代後半から30年代初期の世界恐慌時代、ドイツの経済不況の責任は世界の金融を牛耳るユダヤ人にあると信じていた。このような人間の本質が変わらないかぎり、程度の差こそあれ、人類の歴史は紛争から解放される事はないと考えるのは、悲観的すぎるだろうか。(おわり)
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