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2010-10-18 00:00
これでは自民党政権の方がましだ
杉浦 正章
政治評論家
戦後初の本格的政権交代があって1年余り。そろそろ比較政権論が重要な課題となってきた。筆者は「自民党政権時代の方がましではなかったか」と思い始めている。そのポイントは3つある。1つは民主党政権の虚言体質。2つは外務官僚不在の素人外交。3つは小沢一郎を支持した民主党衆参議員200人の「政治とカネ」看過の姿勢だ。この禁じ手3点セットが白昼堂々と横行しており、現状のままなら7対3の割合で自民党に軍配を上げたい。民主党に点数3を与えたのは、人材面の豊富さだ。中堅層は能力的にも数の上でも圧倒的に自民党を上回る。論客としては一流の自民党幹事長・石原伸晃も2世議員のひ弱さを垣間見せる。一方民主党には2世、3世が極めて少ない。代表質問に立った岸信介の孫で自民党参院議員の岸信夫に対して、首相・菅直人が「私の言う奇兵隊内閣は、代代の総理の子供とか孫だけで構成するのでなく、一般庶民の代表からなっている。そのことだけをもってしても、奇兵隊内閣の言葉は生き生きと生きる」とたんかを切ったが、これは正しい。泥酔財務相が象徴した自民党は土台が腐り、大黒柱はシロアリに食われ放題。断末魔に「売り家と唐様で書いて」、つぶれるべくしてつぶれたのだ。民主党の政治家は、夏でもネクタイをきりりと締めている者が多く、フレッシュさを感じる中堅若手が目立っている。自民党は、クールビズとやらでネクタイを締めなくなって、胸元のだらしなさが外観から内面に浸透してつぶれたのだ。菅政権は閣僚も粒がそろっている。
それでは、それほどの民主党政権がなぜダメ政権なのかだ。まず戦後初めて国民にうそをつく「虚言政権」が登場したことである。マニフェストの財源は、政権を取ればいくらでも出ると称して、ばらまき政治を旗印に総選挙に臨んだ。ナイーブな国民は「自民党よりまし」と投票したが、結果的にだまされた。さすがに菅はマニフェストを修正し始めたが、代表選では200人の小沢支持者が同様のうそをつきまくった。尖閣事件のポイントも、事実上の指揮権発動をしたにもかかわらず、菅も官房長官・仙谷由人も幹事長・岡田克也も虚言を繰り返して、うそを“定着”させようとしていることだ。虚言自体が重大な国民への背信行為だが、問題は尖閣事件の場合、菅と仙谷が、自ら作ったシナリオがすぐにばれると予感できなかった政治判断力の虚弱さにある。少なくとも自民党政権であったら、「これではだませない」と選択のオプションに入らなかったであろう。有能な自民党指導者なら釈放を余儀なくされる場合には、あえて指揮権を発動したかも知れない。指揮権発動は汚職事件で発動することを目的にしてはいない。
次に「政治主導」にこだわるあまり、官僚の助言を得られないことが重要欠陥だ。とりわけ外務官僚無視の政治主導外交で、致命傷とも言えるダメージを2回食らっている。1つは普天間をめぐる鳩山由紀夫の妄言を職業外交官が見て見ぬ振り、聞いて聞かぬ振りをし続けたことだ。鳩山はけっきょく退陣に至った。自民党政権ならいまごろ普天間移転が実現へと動いていただろう。鳩山の「海外・県外移転」を「殿ご乱心」といさめる官僚は皆無だった。もう一つは尖閣事件だ。自民党政権下で起きたら現場で逮捕しても直ちに釈放した可能性が高い。なぜ小泉政権下で中国の活動家7人をすぐ釈放したかと言えば、官僚の進言があったからだ。職業外交官は少なくとも「こうすればこうなる」の海図を描くことができる。自民党政権では、発生した尖閣事件にすぐに官僚が対応して、数種類の海図を描き、事務次官が官邸に行って「これが得策」と選択を進言する。菅政権では政治主導で指示待ちを義務づけられた官僚に、その気力も勇気もない。逆に外相・前原誠司は人事権をぎらつかせるし、仙谷にいたっては、10月15日の参院予算委員会で、菅内閣の天下り対策に批判的な答弁をした経済産業省官房付・古賀茂明に対し「彼の将来が傷つき、残念だ」とやくざまがいのどう喝発言をして、審議が一時紛糾したほどだ。これは政権が官僚を押さえきれず、霞が関に憤まんが充満して、政治家対官僚の暗闘が省庁によっては抜き差しならぬところまで来ていることを物語っている。
さきの民主党代表選では200人の衆参議員が、検察審査会から強制起訴を受ける可能性のあった小沢に投票、地方議員や党員・サポーター票の正常なる流れと逆行した。これが物語るものは何か。「政治とカネ」の問題への感覚マヒの一言に尽きる。国会議員たる者小沢の手下でも何でもないはずだ。選挙によって国民から選び出された選良であることを忘れている。政党の近代化など口にする資格はない。この3つの重大かつ治癒困難な欠陥を抱えたままであるのなら、比較政権論は自民党に軍配を上げざるを得まい。自民党もシロアリに食われ、腐った部分を切り捨てて出直せば、まだ使える。次の解散・総選挙は菅の言うように任期いっぱいの衆参同日選挙などということはあり得ない。予算関連法案をめぐる攻防が山場を迎える来年の3月危機は、十分あり得るし、乗り越えても以後解散・総選挙は赤信号だ。いつあってもおかしくない。菅政権がこのまま虚言を治さず、外務官僚不在外交を続け、「政治とカネ」への甘さを捨てない限り、再度の政権交代は必至であろう。
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