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2010-10-10 00:00
(連載)ロシアの勢力圏に引き戻されたウクライナ(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
これはロシアと欧米の地政学的競合に重要な意味を持つ。初代大統領のレオニード・クチュマ氏と同様に、ビクトル・ヤヌコビッチ氏も、ロシアとの関係を深めながらEUに加盟しようとしている。しかし安全保障環境は一変している。クチュマ政権期には、エリツィン政権のロシアはヨーロッパ・大西洋地域の枠組で欧米とは良好な関係にあった。現在のロシアは帝政時代のナショナリズムに逆戻りしている。さらに9・11事件と中国の「平和的な台頭」によって世界の安全保障のあり方は大きく変わった。そのように危険な世界の中で、ヤヌコビッチ氏はウクライナの国益を保証するための地政学的なバランスに充分な考慮を払わずに、ロシアとの関係を強化してしまった。クチュマ氏は、NATO加盟も模索していた。シャー氏は「ヤヌコビッチ氏が1990年代と現在の地政学の違いを理解していない」という死活的な点に言及しているのだ。
ウクライナの対ロシア依存が危険な水準にある現在、西側はどのように対処すべきだろうか?ヤヌコビッチ氏が大統領に就任した時、アメリカもヨーロッパも「実利的な中道主義者だ」として新大統領を受け入れた。しかしヤヌコビッチ政権下の統治の混乱によって、不正のない選挙で誕生したとされる同政権も、この国の民主主義を破滅させてしまった。これは黒海地域の安全保障に重大な損失である。シャー氏は「EUはウクライナの加盟に信頼性のある道筋を示し、民主化の取り組みを支援すべきだ」と主張している。またオバマ政権には、ロシアとの関係の「リセット」で周辺諸国を犠牲にはしないと言うだけで、行動が伴わなければ、意味がないと提言している。シャー氏はクリントン米国務長官が7月3日にキエフで行なった演説に対し、「アメリカはロシアとウクライナの関係強化を反米と見なさないと言っただけで、アメリカと西側の国益を明確にしていない」と批判している。
シャー氏は非常に重要な点を議論している。オバマ大統領はロシアとの関係の「リセット」にとらわれるあまり、「ポスト・アメリカ」的な行動をとってポーランドからカフカス地域の諸国民の不安をかき立てている。さらにヨーロッパ諸国の指導者達もロシアの拡張主義に歯止めをかけるにはあまりに「ポスト・モダン」である。しかし、事態はある程度の進展を見せている。この10月に開催されたヤルタ・ヨーロッパ戦略会議において、ステファン・フュール拡大・近隣諸国政策担当欧州委員(チェコ)は「近々結ばれるEU・ウクライナ連携協定によってウクライナの政治面での統治状況と経済面での透明性は改善される」と述べた。シャー氏は最後に、「ロシアが万が一にもウクライナを統合しようという野心を成し遂げようとも、ウクライナは主権国家であり、その主権は尊重されねばならない」と述べていることを忘れてはならない。(おわり)
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