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2010-10-09 00:00
(連載)ロシアの勢力圏に引き戻されたウクライナ(1)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
オレンジ革命の崩壊以来、ウクライナはロシアの属国のようになってしまった。最近、チャタム・ハウスが刊行した“The Mortgaging of Ukraine’s Independence”と題するレポートでは、ウクライナ政治と黒海地域の安全保障への理解の鍵が示されているので、この論文のレビューを述べたい。
チャタム・ハウスでロシア・ユーラシア・プログラムの部長を務めるジェームズ・シャー氏は、このレポートでソ連崩壊後のウクライナ政治の概観を述べ、ウクライナをめぐるロシアと欧米の地政学上のパワー・ゲームを分析している。民主主義への希望とは裏腹に、ウクライナ社会は「ソ連崩壊後にお決まりのシニシズム、無気力、他者への不信感、家族と自分以外の者全てに対する無関心に戻ってしまったようだ」という。オレンジ体制の状況がウクライナ国民を失望させてしまった。しかしシャー氏は「ポーランド・リトアニア支配とハプスブルグ朝支配の伝統を受け継ぐウクライナには、ロシア型の力の統治は馴染まない」と言う。これは、ウクライナがヨーロッパとロシアの間で立場が定まらない理由を理解するうえで重要な点である。
この論文で最も重要な論点は、今年の4月21日にウクライナとロシアの間で締結されたカルキフ協定である。シャー氏は「ビクトル・ヤヌコビッチ大統領がこの協定に署名したのは、致命的な誤りだった」と言う。ウクライナはガス輸入価格の30%割引という好条件の見返りに、ロシア軍の駐留延長を認めることになった。ベルギーにあるヨーロッパ政策研究センターのアマンダ・ポール政策アナリストは、ウクライナの『キエフ・ポスト』紙とのインタビューに応じ、「カルキフ協定は予想されていた内容だったので、EUとウクライナの関係悪化にはつながらない」と述べた。「この協定によってウクライナのEU加盟の希望が阻まれるわけではないが、この協定によってクレムリンはウクライナがロシアの勢力圏であることを再確認させた」とも述べている。
ウクライナ国民はガス紛争によって独立以来で最悪の経済危機を経験したので、経済に目を奪われて、安全保障が眼中にない。結果として、ウクライナはロシアに依存した経済政策をとるようになった。ウクライナが協定を破棄すれば、それまでの割引分を支払わねばならない。また、クレムリンとガスプロムがウクライナの経済政策に強い影響力を及ぼすようになった。シャー氏は「ロシアの野心を宥めて、予防するため」として協定を結んだヤヌコビッチ氏の政策を批判し、ウクライナが実質的にロシアの支配を受けるようになったと指摘している。(つづく)
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