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2010-10-07 00:00
(連載)グローバル時代のテロリズムを考える(2)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
アメリカ言語学者及び政治活動家であるノーム・チャムスキーは、「LICがアメリカの政策であるが、性質的にはほぼテロリズムと同一である」と述べている。「トルコやイラクがアメリカの武器を使用し、国境内で何千人ものクルド人を殺害したり、グアタマラやエルサルバドルでアメリカが資金提供した暗殺部隊が何百万人もの農民を殺したように、国は自国の人々や土着民に対して戦争を遂行するかもしれないが、これは決してテロリズムとは呼ばれない」という。例えば、レーガンが認可したニカラグアのコントラ事件やアフガニスタンのムジャヒディーンは、完全に政府を打倒するため計画されたCIAの工作である。過去の歴史が示すとおり、このような「市民に対する戦争は、相手が共産主義者だからという理由で正当化されたが、実際は自分たちの生活、土地、及び生き方を守ろうとした単なる貧しい農民たちに過ぎない場合が多々あった」と主張する学者もいる。
1970年代、ソ連がアフガニスタンに侵略した際、アメリカ政府はオサマ・ビン・ラディンを自由の戦士としてホワイト・ハウスに招待し、軍備などの援助をしている。ラディンと同様、サダム・フセイン、パナマのノリエガ、イランのシャーもまた、CIAに育成された独裁者であるが、彼らは「次第に権力を持ち過ぎ、国家主義者になり過ぎたのだ」という。これを専門家は「ブーメラン効果」と名づけている。
グローバル時代におけるテロリズムの特徴について、学者は「1960年代及び70代のテロリズムは、1990年代から今日起きているテロ事件に比較した場合、様々な点で違いがある」と示唆している。2004年3月、アメリカ社会学協会が発行した『社会学論』誌に掲載された「国際テロリズムと世界のシステム」によると、「テロリストの性質は歴史的に変わってきており、今日のテロリストは、数十年前のテロリストに比較して、あらゆる点で異なる」ということである。例えば、「過去のテロリストは、中央指揮を伴う階層的組織内でプロとしてもっと訓練を受けていたケースが多かったが、最近のテロリストは組織構造が不明確になってきている。また、過去のテロリスト・グループは国籍が統合されていたケースが多かったが、アルカイダのような最近の組織は多国籍メンバーで構成され、組織のリーダーが必ずしもその国の出身者ではなくなってきている」という。従って、テロリストの身元を確証することがより複雑で、困難になってきている。
更に同誌は、過去のテロ行為の傾向を分析し、「現在のテロ組織は、ラディン率いるアルカイダが1998年に東部アフリカのアメリカ大使館を爆破した例や、9・11の同時多発テロなどのように、特定のテロ行為の責任を明確にしなくなってきている。これに対し、過去のテロリストはそのテロ行為の背景にどのような政治的意図があるのか、自分たちは何者であるのかを明白にしてきた」という。例えば、1972年のミュンヘン・オリンピックで起きた黒い9月事件は、イスラエルの選手が結果的に殺されたが、彼らの目的はイスラエルに収監されているパレスチナ人の釈放を求めた点にあったのは明白であった。独立戦争で長い歴史のあるアイルランド共和国の武装組織IRAのテロは、北部アイルランドから英国人を追い出すことを目的としていた。パレスチナ解放機構(PLO)はイスラエル共和国人を西岸から締め出すことが目的であった。
しかし、「近年のテロリストの要求は、このような過去の例に比較すると、はるかに不明瞭になってきており、その点も確実な違いである」と学者等は述べている。上記したアフリカ東部で起きたアメリカ大使館の爆破事件や9・11の同時多発テロの例では、テロリストは明確な要求をしていない。また、テロリストの破壊行為は、過去に比較して無差別になってきている。例えば、「特定の目的を得るためのハイジャクや、あるいは特定の政治家を狙った過去のテロ行為に比較して、1993年及び2001年の世界貿易センターの爆破テロは、無差別で、罪の無い市民が犠牲になっている点に違いがある。(つづく)
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