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2010-10-04 00:00
(連載)米国、包括的対イラン経済制裁へ(2)
石川 純一
フリージャーナリスト
ビンラディンのこの思想の根源はどこからきているのか。ソ連軍アフガン侵攻に反対してアラブ志願兵としてアフガンに赴いたこと、湾岸戦争で聖地の守護者であるべきサウド王家が米軍のサウジ駐留を認めたこと、に対する怒りがあるのは分かる。だが、もっと奥深いものがあるはずだ。信頼できる情報を総合すると、アルカイダの副官で、ビンラディンの右腕と称されるアイマン・ザワヒリを経由して、エジプトの過激原理主義組織ジハード団の原理主義思想に触れたからだという。エジプト人のザワヒリは、何を隠そうジハード団の最高指導者であり、最も先鋭的な過激思想家でもあるからだ。
ザワヒリの現代社会の解釈は、突き詰めると以下のようになる。(1)一神教においては、神に主権があり、立法は神の専権事項である。(2)だが、民主主義は人民に主権があり、人民が立法者となる。これは、民主主義が全能の神から立法権を簒奪し、人民に与えてしまったからにほかならない。(3)民主主義は全能の神を無視している。神の専権事項である立法権を人民に付与することによって、人民を神格化している。(4)これは偶像崇拝である。民主主義は人民を神格化し、崇拝する、新たな偶像崇拝的宗教である。断固として立ち向かい粉砕しなければ、最後の審判を仰ぐことはできない。
ナセル時代からのエジプトの原理団体イスラム同砲団のイデオローグ、サイード・クトゥプ(1966年処刑)の「ジャーヒリーヤ論」(世俗主義者が専制支配する現代社会=イスラム社会を含む=は、イスラム教が誕生する以前のアラブ社会と同じ野蛮状態であり、打倒すべき対象である)の流れを引くのが、ザワヒリである。
彼は、アフガンでビンラディンと接触して、その資金源の豊富さと卓越した兵站面における力量を見抜き、ビンラディンとともに、民主主義打倒論、米国・米民間人抹殺理論を組み立てていった。ビンラディン、ザワヒリのいずれも、アフガン報復空爆以降、現在までその行方は知れていない。(つづく)
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