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2010-09-24 00:00
在沖米海兵隊のグアム移転凍結の意味を考える
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
米国防総省が9月21日に、沖縄に駐留する米海兵隊約8000人をグアムに移転する計画について、環境影響評価書最終版(FEIS)を踏まえた事業計画を決定し、発表した。同計画書には、隊員や施設整備作業員らの急激な流入に伴うインフラ不足を招かないよう、海兵隊の移転のペースを遅らせる「適応性のある計画管理」を導入する、と明記している。そして、日米両政府が2006年に合意している2014年の移転完了期限の先送りを改めて表明した。国防総省は既に、移転期限を長期間延長する方針を示した最終報告を出している。また、FEISでは、「適応性のある計画管理」を導入した場合のシナリオについて、2020年に移転が完了するとしている。
周知の通り、海兵隊のグアム移転と普天間飛行場の移設はセットである。普天間移設は、海兵隊のグアム移転を中核とする米軍再編のあくまでも一部であると言った方が正確かもしれない。米国側が肝心のグアム移転について大幅延期という消極姿勢に転じたことは、当然普天間移設にも影響を与える。本来ならば、日本は、沖縄の負担軽減を理由に、辺野古沖への代替施設の早期建設と在沖海兵隊の早期の2014年のグアム移転完了を米国側に働きかけるべき立場にあるはずである。しかし、鳩山前政権が県外・国外移設を打ち出した結果、今年5月の新たな日米合意に関わらず、辺野古沖への代替施設建設が極めて厳しい状況に陥ってしまっているので、日本側からそのようなことは到底言い出すことができない状況に陥っている。
要するに、日米ともに海兵隊のグアム移転を積極的に推進するモメンタムを失っている。このような状況下では、最も現実的な策は、海兵隊のグアム移転を凍結することである。ただ、普天間飛行場を名護市に移設するとした今年5月の日米合意は、日米両政府の信頼関係回復への象徴であり、これをわざわざ破棄する必要はない。海兵隊のグアム移転凍結は、財政難に苦しむ日米両政府にとって、必ずしも悪い話ではない。また、普天間移設問題を棚上げすることによって、普天間に過大な外交的エネルギーを費やさずに、日米の安全保障に関する対話を進めることができる可能性がある。
日米関係は、いうまでもなく普天間問題だけではない。そして最も重要な戦略的観点からも、海兵隊が沖縄に留まることによって抑止力が維持できるという大きな利点がある。米軍のグアム移転は、RMA化が進んだ米軍は遠隔地からでも紛争地域に迅速に駆けつけることができるという、ラムズフェルド元国防長官が傾倒していた理論に基づくものだが、それを極端に推進すれば「常駐なき安保」に繋がりかねず疑念がある。やはり、米軍のプレゼンスは重要である。とりわけ、昨今のように東シナ海や南シナ海で「波が高い」状態は、グアム移転で合意した当時からは安全保障環境が変化したと言うべきである。在沖海兵隊のグアム移転を凍結すれば、沖縄県民は反発するであろうが、それは、長年にわたる綱渡りの結果できたガラス細工のような辺野古沖移設をぶち壊してしまった民主党政権が、責任を持って謝罪し償う他はない。
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